人間椅子の楽曲は、洋楽のハードロック等から大きな影響を受けている。特に70年代~80年代頃のブリティッシュハードロックが血肉となっている。
オリジナル曲を作る上でも、この曲のイメージを膨らませてみようと、インスピレーションを受けた曲もあろう。一方でずっと聴いていた故に似てしまうこともある。
そこで今回は、僕なりに人間椅子の楽曲の元ネタはこれなのではないかという曲を挙げて、それについて検証してみようという記事を書いた。
人間椅子の楽曲と元ネタの比較検証
元ネタとして選んだ要素としては、2つある。
- 楽曲の構成や雰囲気等からインスピレーションを受けたと思われるということ。
- 単純にリフなどが似ていると思われること。
いずれの基準にも合致する曲と、単に似ているだけという曲もあるのだが、合計10曲を検証してみた。
陰獣
人間椅子がテレビ「三宅裕司のいかすバンド天国」に出演した際に演奏された、名刺代わりの代表曲。ワウペダルを使った重厚なリフを主体とした人間椅子らしい楽曲だ。
⇒ Budgie – Guts
70年代のB級ハードロックの代表格であるBudgieのファースト1曲目。ブルース色が薄く、それでいて独特のヘビーさを持つという特異なバンドだ。
人間椅子は「Breadfan」に日本語のオリジナル詞を乗せて「針の山」という曲名でカバーしている。ベースの鈴木研一氏が敬愛して止まないバンドであり、どう考えても影響は大であろう。
この曲もワウのかかったヘビーなリフが特徴である。1つのリフと、その変形だけで押していくスタイルは鈴木氏のが作曲に大きな影響を与えている。
鈴木氏はこの曲について「こういう曲を作りたいという目標の曲」と語っていたことがある。
陰獣もシンプルな展開の曲だが、実はもともと7分以上ある曲で、構成に関しては和嶋氏の作った部分が大きいと思われ、必ずしも全部そっくりという訳ではない。
狼の黄昏
2016年『怪談 そして死とエロス』に収録。狼の鳴きまねが入っており、鈴木氏らしいストレートな楽曲である。
⇒ Ozzy Osbourne – Bark at the Moon
こちらもタイトルからしてそのまま、と言う感じだが、狼男に扮したオジーオズボーンのジャケットも印象的だ。
メインの和音をかき鳴らすようなリフは人間椅子にしては珍しいが、ここから影響を受けていると思った。
2017年の人間椅子倶楽部の集いでカバーされたが、和嶋氏にとっては弾くのが難しいタイプの楽曲らしい。この曲にもラストに狼の鳴きまねが入っており、しっかりコピーされている。
夜叉ヶ池
ファーストシングルにして長尺の人気曲。和音階の冒頭からハードな後半へと続く展開は圧巻だ。
⇒ Led Zeppelin – Stairway to Heaven(天国への階段)
これは多くの人も感じているオマージュではないかと思う。「夜叉ヶ池」はまさに「天国への階段」の日本人的解釈とでも言おうか。
アコースティックな前半から、ハードな後半へと言う流れは共通する。
「天国への階段」はダブルネックギターを用いて演奏されるが、和嶋氏も「夜叉ヶ池」では12弦ギターで中間部までを弾き、後半をノーマルギターで演奏している。
そしてライブでは「夜叉ヶ池」の前には、「天国への階段」の冒頭が演奏されることが多い。
自然児
2001年の10thアルバム『見知らぬ世界』に収録。和嶋氏の明るい曲調の合間にあって、いい意味で重苦しい鈴木氏の佳曲。
⇒ King Crimson – Red
本人も似てしまったとの発言が実際にあった曲であるが、確かにリフがよく似ている。
「Red」はボーカルのない曲で、プログレではあるが、暴力的なサウンドであり、オルタナティブロックのバンドからも人気が高い曲である。
「自然児」が似ているのはメインのリフだけで、展開はサバス的な要素もあって、しっかりオリジナリティも発揮しているとは思う。
戦慄する木霊
1998年のアルバム『頽廃芸術展』の2曲目に収録されている曲。1曲目の「胎内巡り」のヘビーな曲調から、一転シンプルでかっこいいハードロックだ。
⇒ Budgie – Crash Course in Brain Surgery(脳外科手術の失敗)
こちらもBudgieの代表曲である。「Breadfan」もそうであるが、70年代の前半にこのスピード感の曲は画期的だったことだと思う。
メタリカもカバーしており、筋肉少女帯の「少年、グリグリメガネを拾う」もこの曲の影響を受けている気がする。そして「少年、グリグリメガネを拾う」を人間椅子もカバーしている。
それぐらいハードロック好きにはたまらない曲展開、リフなのだろう。
ちなみに「針の山」と同様の形で、オリジナル詞をつけて、「造反有理」という未収録曲がライブで演奏されることがある。
デビュー前後にはよく演奏されており、ちなみに歌詞は「太陽黒点」と似ている。
かつての人間椅子倶楽部の集いにて、当時作られたカセットテープに入っていた歌詞カードの複製が配布され、そこに「造反有理」の歌詞が載っている。
秋の夜長のミステリー
2009年のアルバム『未来浪漫派』に収録。メンバー3人全員による作曲、そして全員ボーカルと言う珍しい曲。
⇒ フィンガー5 – 個人授業
やや番外編と言う感じもするが、歌謡曲ながらハードロックテイストのあるこの曲。メインのリフのリズムは、個人授業そのものではなかろうか。
そして少しこのコミカルなテイストも含めて、インスピレーションを受けている気がする。マニアックなことを言えば、Gmのキーで始まって、メジャーに変わるところも同じである。
(個人授業はCmでキーは異なるが)
やっぱり個人授業に影響を受けているのではないかと思える。
審判の日
3枚目のアルバム『黄金の夜明け』収録。歪んだベースから始まるヘビーなリフが印象的だが、中間部の展開はプログレッシブだ。
鈴木氏は「よくできた曲だ」と自画自賛していたと記憶している。
⇒ KISS – Parasite
鈴木氏がKISSの中でもかなり上位に挙げていた、2枚目のアルバムに収録されている曲。B級の臭いもするのだが、しかしこのリフはとてもかっこいい。
「審判の日」はこの曲のリフの音階をなぞらえていると思われた。と言うより、好き過ぎて無意識に似てしまったのかもしれない。
展開はこの曲の方がシンプルであり、それにプログレ要素を足して「審判の日」となったように思える。
踊る一寸法師
1995年のアルバム『踊る一寸法師』収録のタイトル曲。ラストを飾る壮絶とも言えるヘビーな曲であり、ライブでの鈴木氏のパフォーマンスも圧巻だ。
⇒ Black Sabbath – Black Sabbath
Black Sabbathのファーストアルバムの1曲目にして、おどろおどろしさ満載の曲。
怪しげなリフで始まり、静かになってボーカルが入るという構成は、これ以外の曲でも人間椅子は用いている。
後半に向けて怒涛の盛り上がりを見せ、ギターソロで締めくくるのもかっこいい。
「踊る一寸法師」では、この曲をベースにしながらも、より怪しさを増すべく、中間部の静かなパートが設けられており、鈴木氏にしか出せない独特のヘビーさとなっていると言えるだろう。
※アルバム『踊る一寸法師』のUHQCD再販について書いた記事
羽根物人生
1995年のアルバム『踊る一寸法師』に収録された、ギャンブルシリーズの曲。一聴すると、四畳半フォークとも思えてしまう、前半部が面白い。
⇒ Uriah Heep – Lady In Black
フォークもやりたかったかもしれないが、先行するイメージとしては「Lady In Black」があったようである。
言われてみるとそうなのだが、鈴木氏のフィルターを通すと随分違うものになって興味深い。
個人的には後半の哀愁の展開とギターソロは、Eaglesの「Hotel California」ではないかと思っている。
痴人のモノローグ
2017年の20thアルバム『異次元からの咆哮』に収録。鈴木氏としては、古臭いハードロックを目指して作った、いなたい楽曲である。
⇒ Judas Priest – Saints In Hell
この曲については、似てしまったというレベルではなく、パクリになってしまったと鈴木氏は自身のコラム『ナザレス通信』で謝罪を行っている。
もちろん意図してパクった訳ではなく、無意識のうちに同じリフができてしまったとのこと。確かにドラムの入り方まで同じであり、大失態だったと語っている。
まとめ
今回は人間椅子の楽曲の元ネタ、ルーツと思われるものを検証してみた。
これから人間椅子を入り口に、ハードロックを深く聴いていきたいと思う人の入門編ともなれば幸いである。
そして人間椅子は初海外公演を行うに至った。
いよいよ海外のハードロックに影響を受けてきた人間椅子も、海外のバンドに影響を与える側になるのではないかと思うと、感慨深い。
なお挙げている曲は筆者の独断であるものも含まれるため、事実とは異なることが当然あるだろう。ファンとしてはあれこれ想像するのが楽しいので、今後もこういった分析を試みてみたい。
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