いよいよ2025年11月19日に、ハードロックバンド人間椅子が24枚目となるオリジナルアルバム『まほろば』をリリースすることが決まった。
ふと新作のタイトルについて考えてみた時、人間椅子のアルバムタイトルにおいて平仮名のみだったことはこれまでなく、『まほろば』が初なのだと気付いた。
そしてこれまでのアルバムタイトルを思い返すと、意外と”漢字〇文字”など、文体や文字数などからタイトルを分類できるのでは?と考えた。
分類してみるだけで、それに意味を見出そうと言うものではない。今回は人間椅子のアルバムタイトルが意外と分類できそうなので、やってみたという内容である。
人間椅子のアルバムタイトルを分類してみた
マニアックな話しながら、人間椅子のアルバムタイトルで平仮名のみなのはこれまでになく、新作『まほろば』が初となる。意外と人間椅子のアルバムタイトルには傾向があり、多いのは漢字のみで、『人間失格』『修羅囃子』など4文字や、『羅生門』『萬燈籠』など3文字が多い。
— まるとん@自部屋の音楽 (@malton_shm) September 6, 2025
人間椅子のアルバムタイトルを見ていたら、意外とグループ分けが簡単なのではないか、と思ったのが今回の記事である。
分類の基準は意味的なものというより、文体や文字数など、形態的な要素である。
アルバムタイトルの特徴で分類すると、3つに分類できると思った。「漢字のみ」「○○の○○」「その他」の3つである。
20枚以上のアルバムがあって、ここまで簡単にまとめられるバンドも少ないのではないか、と思う。つまりデビュー時から方向性が一貫していることがアルバムタイトルからも窺えるのだ。
さて、3つの分類に含まれるアルバムについて、0th『人間椅子』(1989)を含み、ベスト盤・ライブ盤は除いたオリジナルアルバム25枚について分類の結果を示した。
漢字のみ
No. | アルバムタイトル | 漢字の数 |
---|---|---|
1 | 0th『人間椅子』(1989) | 4 |
2 | 1st『人間失格』(1990) | 4 |
3 | 4th『羅生門』(1993) | 3 |
4 | 7th『頽廃芸術展』(1998) | 5 |
5 | 8th『二十世紀葬送曲』(1999) | 7 |
6 | 9th『怪人二十面相』(2000) | 6 |
7 | 11th『修羅囃子』(2003) | 4 |
8 | 12th『三悪道中膝栗毛』(2004) | 7 |
9 | 13th『瘋痴狂』(2006) | 3 |
10 | 15th『未来浪漫派』(2009) | 5 |
11 | 16th『此岸礼讃』(2011) | 4 |
12 | 17th『萬燈籠』(2013) | 3 |
13 | 18th『無頼豊饒』(2014) | 4 |
14 | 21st『新青年』(2019) | 3 |
15 | 22nd『苦楽』(2021) | 2 |
16 | 23rd『色即是空』(2023) | 4 |
人間椅子のオリジナルアルバムのタイトルにおいて最も多かったのが、漢字のみで構成されるタイトルである。
25枚のうち、16枚が漢字のみで構成されるタイトルだった。
文字数の最大は7文字で8th『二十世紀葬送曲』と12th『三悪道中膝栗毛』の2枚、最小は2文字で22nd『苦楽』である。
また最も頻繁に登場するのは4文字のタイトルで、25枚のうち6枚がそれに該当する。古くはデビュー盤1st『人間失格』から23rd『色即是空』まで、どの時期にも満遍なく登場している。
なお漢字のみのタイトルは文学作品等から拝借したものも多い一方で、11th『修羅囃子』や18th『無頼豊饒』など熟語を組み合わせた造語もみられる。
少し逸れるが、『無頼豊饒』からアルバムを出すごとに漢字が一文字ずつ減り、『苦楽』の次にはどうなるかと見ていたが、結局『色即是空』でまた文字数が増えたのだった。
このように内容的には様々なものを含みつつ、漢字のみのタイトルが中心であることは、やはり日本語のロックを続けてきたことが垣間見えるのであった。
○○の○○
No. | アルバムタイトル |
---|---|
1 | 2nd『桜の森の満開の下』(1991) |
2 | 3rd『黄金の夜明け』(1992) |
3 | 6th『無限の住人』(1996) |
4 | 14th『真夏の夜の夢』(2007) |
5 | 20th『異次元からの咆哮』(2017) |
次いで多かったパターンが、○○の○○という形のタイトルである。25枚のうち、5枚がそれに該当した。
あまり重要なことではないが、14th『真夏の夜の夢』には”の”が2回、2nd『桜の森の満開の下』では3回登場している。
○○の○○というパターンは、文学作品などからタイトルを借りている場合がほとんどであることが分かる。
”の”をタイトルに入れると言うことは、説明的で文語的な表現になりがちであり、これも文学的な作風を続けてきた人間椅子らしいものと言える。
なお5枚の中で、作品から借りたのではないものは20th『異次元からの咆哮』のみである。
その他
No. | アルバムタイトル |
---|---|
1 | 5th『踊る一寸法師』(1995) |
2 | 10th『見知らぬ世界』(2001) |
3 | 19th『怪談 そして死とエロス』(2016) |
4 | 24th『まほろば』(2025) |
ここまでの2つの分類により、残されたアルバムは3枚と新作『まほろば』のみなのだ。これらは分類が難しいので”その他”としている。
まずは5th『踊る一寸法師』と10th『見知らぬ世界』はいずれも小説等からタイトルを借りたものだった。
また19th『怪談 そして死とエロス』はメインタイトルは漢字2文字であるが、副題がついていることから、その他のグループに入れた。
そして『まほろば』は人間椅子史上初の平仮名のみによるアルバムタイトルである。こうして見てみると、かなり特異なタイトルであることがお分かりいただけるだろう。
なお余談ではあるが、人間椅子の楽曲タイトルにおいても平仮名のみのものは少ない。「どだればち」「どっとはらい」「ねぷたのもんどりこ」「なまはげ」など一部の楽曲に限られる。
まとめ
今回の記事では、人間椅子のオリジナルアルバムのタイトルに注目し、その文字数や文体などから分類を試みたのだった。
もちろん内容で見ていくと全く異なる分類があるし、それぞれの作品に込められた意味合いはすべて異なるものである。
ただ文体や文字数といった”見た目”には、結構似たアルバムが多いことが今回の記事でお分かりいただけたことだろう。
そして2025年11月19日にリリースされる『まほろば』は初の平仮名のみによるタイトルである。
ギター・ボーカルの和嶋慎治氏の解説によれば、”まほろば”とは「素晴らしい場所」「住みやすい場所」という意味の日本の古語である。
日本語の古語の柔らかい響きや、その文字の見た目は、少しこれまでの作品の雰囲気と異なるようにも思える。どんなアルバムになったのか、とても楽しみだ。
※”人間椅子らしさ”の正体と変遷についての考察 – デビュー前後の”ごった煮”の音楽性を起点として
コメント