【ライブレポート】2024年2月16日(金)THEイナズマ戦隊 ベストヒット☆ツアー2023~2024 渋谷La.mama

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デビューして22年となるロックバンドTHEイナズマ戦隊、2023年より「ベストヒット☆ツアー2023~2024」と題して全国ツアーを行っている。

筆者としてはライブハウスで彼らのワンマンライブを見るのは、何と2005年以来の約18年ぶりとなる経験だった。

”ベストヒット”と題したツアー、どんな選曲になるのか楽しみに参加した。久しぶりのイナ戦ワンマンの2月16日(金)渋谷La.mamaでの2Daysの初日の模様をレポートする。

なお今回は選曲の一部を取り上げるが、筆者が全曲を熟知できていないためセットリストは載せていない。

また本公演を観ながら感じた、THEイナズマ戦隊の現在地についても後半で述べることとした。

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ライブレポート:ベストヒット☆ツアー2023~2024 渋谷La.mama

THEイナズマ戦隊は”青春パンク”ブームが勃興する中、2002年にミニアルバム『THEイナズマ戦隊』をリリース、2003年にシングル『月に吠えろ』でデビューしている。

少しだけ筆者のイナ戦ファン歴を書いておこう。

筆者はその少し後、2004年にコント番組「メンB」への出演で彼らを知った。そこで披露された「応援歌」や「パーダラ・ブギ ~後悔するにゃ若すぎる~」などの曲の良さに惹かれた。

ライブに初めて参加したのはそのさらに少し後、2005年リリースの3rdアルバム『為さねば成らぬIII枚目』のリリースツアーであった。

細かい記憶はないが、アンコールの呼び出しは「なぁ次郎」のサビを合唱するというもの、アンコールの最後に「銀座通り」を披露して会場が爆上がりしていたことが印象に残っている。

まだ”青春パンク”の流れで見に来ている人たちも残っていたような時代であった。5th『どうにもこうにも俺MHz』辺りまではよく聴いていたが、作風の変化に伴いちょっとずつ離れていった。

『未来の地図』『17』など好きなアルバムは聴いていたものの、所々聴いていない時期があったりしていた。

2018年に日比谷野外音楽堂で「俺とオマエと野音と応援歌」が開催されると聞き、10数年ぶりにライブに参加したのだった。その後、2019年のやついフェスでもう一度見て、今回に至った。

さて2月16日(金)の渋谷La.mama初日、初めて訪れるライブハウスであった。今回もライブ前の過ごし方について書いたこちらの記事に従って、早めに会場付近には到着していた。

しかし思わぬ誤算で、近隣のロッカーが軒並み埋まってしまっており、荷物を抱えたまま会場に行くことに。これはもう末席で見るしかないと、開演15分前くらいにひっそりと入場した。

会場では事前に収録されたメンバーによるラジオ番組が流れていた。直前に入場したため、ほとんど内容は分からなかったが、本ツアーに向けた思いなどを語っているのが少し聞こえた。

筆者は荷物もあったので、大きな柱の右横辺り、柱に隠れるようにひっそりと観ることにした。ほぼ定刻通りにライブがスタートする。

1曲目は「Mr.ハングリーマン」からスタート。筆者としては意外なところだったが、ボーカルの上中氏とバンドが一体となりながら、弾けるロックンロールナンバーで軽快にライブの幕が開けた。

序盤はロックンロールな楽曲が続き、「絶好調で一歩前進!!」「赤い命が燃えている」「手を打ち鳴らせ!!」などが披露されていた。

上中氏は”お立ち台”に上り、ファンの顔を見ながらパワフルに歌っている。ベースの中田氏は観客のエリアにまで行ってベースを弾くなど、ファンとの距離感はとても近い感じがした。

「手を打ち鳴らせ!!」では手拍子があったり、歌ったり、忙しいことになっており、上中氏が「全然バラバラやった」「でもそれが愛おしい」と語る場面もあった。

少しメロディアスな楽曲が続き、個人的には「擦り傷」「なぁ次郎」「線路沿い」辺りの楽曲がよく聴いていた楽曲だけにグッとくるポイントであった。

「這いつくBATTE」など割と最近の曲もあったが、2010年の『未来の地図』や2012年の『GLORY DAYS』などからの選曲が多めだったような印象である。

中盤には新曲の披露もあった。「You ROCK it」と繰り返される楽曲であり、もし自分がこんな仕事をしていたら、こんな人だったらとイナ戦らしい歌詞の楽曲だった。

さらにはベストヒットメドレーと題して、楽曲がメドレー形式で次々に披露される場面もあった。

「~熱血商店~」「ドカン行進曲(男編)」「Ban&An ~バカ万歳アホ万歳~」「生命パワー」など懐かしい曲も登場し、大いに会場が盛り上がった。

”ベストヒット”と言う名前からすると結構渋い選曲もあったような気がする。シングル『嗚呼!!されど青春ごっこ』収録の「文京台青春物語」が登場したのには驚いた。

単にライブに参加し続けて来なかったから、何が定番なのか分からないだけかもしれないが、この曲はやるだろうと思ったものが意外にも外されていた。

MCは「おんなじきもちやよ~」のくだりと、「屈指のボーカリストなのにキャラが先行してしまう」のくだりがヒットだった。

「おんなじきもちやよ~」のくだりとは、リハーサルで上中氏と中田氏が喧嘩した後で、上中氏がLINEで謝ったところ、中田氏から返ってきた返事をいじったもの。

どんなテンションで言ったのかについて、2人の間には見解の相違があり、上中氏はそのLINEが恥ずかしかったとのこと。

「おんなじきもちやよTシャツを作ろう」と上中氏が言うと、「今ちょっと面白いだけで絶対売れへん」と中田氏が突っ込んでいた。

「屈指のボーカリストなのにキャラが先行してしまう」のくだりは、某ライブハウスの人たちが上中氏のボーカルを絶賛しつつも、その上手さがキャラ先行で薄れてしまう、と言われてしまったとのこと。

ギターの山田氏がしっかりと説明をしてくれたのだった。

「ベーシストを解雇しようか」というなかなかブラックジョークも飛び出したが、イナ戦は北海道出身の先輩の後を追いかけてきて、どんな気持ちなのだろう。

ショッキングなニュースの後だけに、「イナ戦はずっと続けてきたし、これからも死ぬまで歌う」としきりにMCで語っていたのも印象的であった。

後半では「素晴らしき人生」「ユメミルチカラ」など、思わず笑顔になれるような楽曲が立て続けに披露される。本編最後は「各駅停車」で終了、イナ戦のこれまでを歌ったような歌詞が胸に響く。

「すぐに出てくるから待っとれや」と上中氏は言葉を残して、一度舞台からはける。

アンコールに応えてメンバーが再度登場、本ツアーのために作られたTシャツやパーカーをそれぞれ着用して現れた。アンコール前にはグッズ紹介の時間もあった。

上中氏は「何にもない人生かもしれないけど、イナ戦という推しがいるなんて最高」と語りつつ、「武道館はまだちょっと遠いけど、ずっと続ける」ということを何度か語っていた。

アンコールは「応援歌」、そして「Everything is gonna be alright」を披露して終了となった。

なお夏ごろに音源(アルバムのようだ)のリリース、8月にはツアーに出ると告知された。

終演後、少し会場に残っていたら、女性ファンの方々の声が聞こえてきた。「中学生の時に来ていたのが大人になって…」と若い女性ファンが久しぶりにライブに来ていたそうだ。

自分も似たような境遇であり、やはり20年以上のバンドとなると、色んなファンの人が来ているのだな、としみじみ思いながら会場を後にしたのだった。

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全体の感想 – THEイナズマ戦隊の現在地とこれから

最後に全体的な感想を述べるとともに、THEイナズマ戦隊の現在地とこれからについて、筆者なりに感じたことを書いておきたい。

まずは、2005年に見た頃と比べれば、ベテランの佇まいを獲得していたと強く感じた。20年近く経つのだから変化があって当然ながら、着実にここまで歩いてきたのが伝わるステージだった。

野音やフェスで最近のイナ戦も見たが、より距離が近くてアットホームなライブハウスでのワンマンという場で、イナ戦の現在地をよりはっきりと感じることができた。

「やめるタイミングはたくさんあったが、続けてきた」というMCが印象に残っており、イナ戦の現在地をよく表していると思う。

イナ戦がデビューした当時は”青春パンク”ブームが起きていたが、残念なことに”泥船”のブームだった。

歌詞が胸を打つとか、普遍的に良いメロディである、などの要素がなければ売れず、音楽的な土台としては何もないに等しいブームであり、長続きするものではなかった。

そのため青春パンクに名前を連ねるバンドのほとんどが路線変更を強いられ、上手く移行できなかったバンドは解散することとなっていった。

イナ戦は当時から青春パンクのど真ん中ではなく、ウルフルズなどのロックンロールにも影響を受けたバンドであり、最初から”異端”な印象も持っていた。

初期こそ青春パンク的な荒々しいサウンドだったが、次第に本来持っていたメロディの良さ・ロックンロールの持ち味が発揮されて、人気を博すこととなっていった。

とは言え、青春パンクブームが去った影響は大きかったようで、本公演の中でも辞めるタイミングの1つにブームの終焉を挙げていた。

実際のところ、イナ戦も2000年代後半頃から青春パンクの色を意図的に排すかのように、ロックっぽいアレンジを取り入れるなど、模索の時代があったように思う。

イナ戦の魅力は人を元気づけるようなパワフルで楽しいロックンロールサウンドと、普遍的にグッとくるメロディにある、と筆者は思っている。

そうした魅力が上手くまとまったアルバムは輝きを放つことになり、ようやくその形が安定しつつある段階に来ているようにも思う。

そう考えると、改めてTHEイナズマ戦隊は過小評価すぎると言う印象がある。なぜもっと注目されないのか?と言う思いは常にあるのだ。

今回のライブを観て思ったのは、今のイナ戦の現在地は「ここにいる人たちのために届ける」というものだったということだ。それは上中氏のMCでも明確に語られていることである。

筆者のように久しぶりにポッとライブの空間に入ってきた者からは、「ここにずっといる人たちとともに紡がれてきたストーリーがあるのだな」という感覚が大きかった。

言葉にするのが難しい感覚だが、”ここにいる人たち”に伝わるものが、”外にいる人たち”にはなかなか伝わらない、という現象が起きているように思えた。

それは”ベストヒット”というタイトルに比して、筆者が思うにやや尖った選曲にも表れているようにも感じられた。それはいわば、バンドのこだわりのようなものでもあろう。

そうしたこだわりは、20年以上続けてきた自負から来るものであり、それが冒頭述べたベテランの貫禄・風格のようなものであったと思う。

きっとイナ戦のこれからは、そうしたこだわりから脱し、”開き直り”のタイミングがいずれかやって来るのだろう。

それは諸先輩バンドが通ってきたように、年齢とともにこだわりがなくなるタイミングだ。きっとイナ戦にとってその時が大きなチャンスではなかろうか。

開き直りとは俯瞰のタイミングでもある。改めてイナ戦の魅力とは何か、それがダイレクトに伝わる楽曲とは何か、ということが俯瞰されると、きっとさらに飛躍するに違いない。

そして大きなうねりができた時、武道館のステージが待っているような気がする。まさにこれからが楽しみなバンドがTHEイナズマ戦隊である。

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