バンド名のイメージとはかなり音楽性が違うおすすめ洋楽バンドを集めてみた

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画像出典:Sony Music

『名は体を表す』という言葉があるように、名前のイメージは大きい。それは音楽においてもそうであり、バンド名から連想される音楽性は大体想像通りのことが多い。

例えば、Black Sabbathという文字列からは、やはりおどろおどろしい音楽が想像されるし、Pet Shop Boysには、ポップな雰囲気が漂っている。

しかし例外と言うのが結構ある。バンド名からは、意表を突くような音楽をやっているグループが結構あるのが面白い。

今回は、そんなバンド名のイメージと音楽性がかなり違っているバンドを集めて紹介しよう、という記事である。良い意味で裏切られた、筆者おすすめのバンドを紹介したい。

ジャンル的には、大きく分けて「ハードロック・ヘヴィメタル」「オルタナティブロック」の2つに加ええ、別の意味で裏切られた「番外編」を合わせて、計10バンドを紹介したい。

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ハードロック・ヘヴィメタル

最初に紹介するのは、ハードロック・ヘヴィメタルのバンドである。

やはりこのジャンルは、Black Sabbathなどがそうであるように、恐ろしい言葉をバンド名とすることが多い。そして音楽的にも、恐ろしい、ヘヴィでダークな音楽が想像される。

しかし恐ろしいバンド名とは裏腹に、音楽性は全然イメージと違うバンドというのがいくつもある。

今回はいかにも恐ろしい、あるいはゴツいバンド名なのに、音楽性はキャッチーなバンドを4つ紹介する。

Lucifer’s Friend

最初に紹介するのは、1970年にドイツで結成されたハードロックバンド、Lucifer’s Friendである。

バンド名には”Lucifer”という堕天使の名前がついており、まさに邪悪なイメージのバンド名だ。

ロックと悪魔崇拝、サタニズムは縁のあるものであり、1960年代後半は悪魔教のブームもあったようで、その後のヘヴィメタルにおいても悪魔崇拝をイメージするバンドが多くなっている。

Lucifer’s Friendが結成された1970年と言えば、Black Sabbathのデビュー年でもある。

しかしこのLucifer’s Friendは特に悪魔的な音楽をやっているバンド、ということでもないようである。筆者がよく聴いていたのは、1stアルバム『Lucifer’s Friend』である。

ジャケット写真はやや不気味な雰囲気を感じさせるが、内容は王道のハードロックに若干のプログレ風味を加えたものである。

1曲目の「Ride The Sky」に代表されるように、Led Zeppelinのハードさに、Uriah Heepのクラシカルな要素を足したような楽曲が魅力となっている。

Uriah Heepを感じるのもそのはずで、ボーカルのJohn Lawtonは後にUriah Heepに加入したことで知られる。

バンド名は当時の流行りを取り入れて悪魔的にしたものの、目指していたのは本格的なハードロックバンドだったようである。特に1stアルバムは、70年代ハードロック好きには絶対おすすめの名盤だ。

なお2nd以降は、プログレの要素がさらに強まり、80年代にはかなりポップな路線へと転換する。

筆者の印象としては、Blue Öyster CultCaptain Beyondなどが好きな人には、相性が良さそうなバンドだと思う。

Demon

”悪魔”を連想するハードロックのバンドは数あれど、かなり直球の名前であるDemonも紹介したい。

Demonは1979年にイギリスで結成されたハードロックバンドである。いわゆるニューウェーブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタル(NWOBHM)の流れに組み込まれるバンドだ。

同時期には、Angel WitchSatanなど、悪魔的な世界観のバンドが存在し、これらのバンドはスピーディーなメタルの中に、不気味な要素を含んだ点で共通している。

しかしDemonはNWOBHMの時期ではあるが、彼らとは異質な音楽性を持っている。それは1981年の1stアルバム『Night of the Demon』から一貫している。

彼らの持ち味は、非常にストレートでメロディアスなハードロックである。さらにはアメリカでも受け入れられそうな、ロックンロール的な要素も感じる。

タイトル曲「Night of the Demon」は哀愁漂うメロディラインとギターが印象的であり、同時期のサタニックでスピードメタル的なバンドの楽曲とは一線を画す。

2ndアルバム『The Unexpected Guest』は、1stの流れを受け継ぎつつ、彼ららしさが確立された名盤とされている。

その後はよりキーボードが目立ち、メロディアスハード寄りになったり、ハードロックに回帰したり、変化があるようだ。

いずれにしても、名前のイメージとはかなり異なり、トリッキーな要素はなく、メロディアスで実直なハードロックバンドという印象である。

Ghost

近年のバンドの中で、バンド名と音楽性の関係においてユニークなのがGhostである。2006年より活動しているスウェーデンのバンド、というよりユニットだ。

Ghostという不気味なバンド名であれば、現代のメタルシーンならば、例えばブラックメタルやスラッシュメタルなどをイメージしそうなものである。

しかしGhostをジャンルで括るのであれば、1970~80年代のハードロックである。サタニックなバンド名が流行っていた、あの時代をまさに彷彿させる音楽なのだ。

その意味ではバンド名と音楽性は結び付いているのだが、なかなか現代のバンドで、サタニックな名前からは想像しにくい音楽性なのである。

2010年の1stアルバム『Opus Eponymous』こそ、サタニックでおどろおどろしい曲調が多かったものの、2018年の4th『Prequelle』辺りから、80年代の煌びやかなサウンドを取り入れ始める。

例えば「Dance Macabre」は、いわゆる4つ打ちビートに乗せたダンスナンバー。この曲調はGhostというバンド名からは意表を突くものである。

現時点での最新作、2022年の5th『Impera』では、さらに80年代サウンドを追求した作品となっており、ますますその音楽性のユニークさが増している。

※Ghostについて詳しく紹介した記事はこちら

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オルタナティブロック

かなり広く「オルタナティブロック」と括ったが、ここではパンクやニューウェイヴ、そしてポップスに近いオルタナティブロックなど、雑多に取り上げた。

オルタナティブロックにおいては、名前と音楽性の関係も色々である。あえて音楽性を言い当てていない奇をてらった名前をつけたり、名前の尖り具合に反してポップな音楽だったり、様々だ。

The Pop Group

まずは全く音楽性と名前が反対のバンドである。1978年にイギリスで結成された、ポストパンクのバンドであるThe Pop Groupだ。

バンド名には”ポップ”という言葉が入っているが、その音楽性は全く逆であり、非常に実験的な音楽である。バンド名自体に皮肉が効いているといったところだろうか。

彼らの1979年の1stアルバム『Y (最後の警告)』は、ポストパンクの走りと言われ、パンクロックにファンクやレゲエなどの雰囲気が加わったような音楽性が特徴である。

非常に攻撃的なギターやボーカル、ノイジーなサウンドは、めちゃくちゃに見えて構築されたものに仕上がっている。

ダブの要素も感じる1stアルバムは、なんと2021年にダブミックスされた『Y in Dub』がリリースされたことも話題となった。

彼らはオリジナルアルバムとしては、2nd『For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?』を残して1981年に分裂、解散することとなった。

なお2010年に再結成を果たし、アルバムリリース、そして来日公演も果たしている。

Beach House

続いて紹介するのは、Beach Houseというグループである。日本語では、”海の家”を意味する言葉であり、どこか陽気な雰囲気も漂ってくるバンド名だ。

しかしその音楽性は陽気さとはずいぶん異なり、浮遊感のあるドリームポップのグループである。

2004年にアメリカで結成された男女2人によるグループであり、2006年に1stアルバム『Beach House』をリリース。

筆者がとりわけ好きなのは、2012年にリリースされた4thアルバム『Bloom』である。それまでのアコースティックでルーズな雰囲気から、浮遊感はそのままに音像がはっきりした印象だ。

そしてどこまでも美しいサウンド、メロディが心地好い。続く2015年に5thアルバム『Depression Cherry』も同系統の作品である。

ドリームポップと言うジャンルからすれば、3rd辺りまでの作品の評価が高いのだろうが、メロディの完成度においては、4thや5th辺りがとりわけおすすめである。

その後はややリリースペースを落としつつ、2022年には2枚組のアルバム『Once Twice Melody』をリリースしている。

The Durutti Column

日本人からすると、なかなか馴染のない英語というものがある。ここから紹介するのは、あまり聞き馴染みのない英語を名前としたバンドをいくつか紹介しよう。

The Durutti Columnは、スペイン内戦時に共和国軍側で戦ったアナキスト闘士の率いた部隊の名称から取られているという。なかなか日本人にとって、すぐに意味の分かる言葉ではないだろう。

1978年よりイギリスで活動している、Vini Reillyによる音楽プロジェクトがThe Durutti Columnである。

ポストパンクの時代と言われれば、攻撃的な音楽を想像するがそれも裏切られる。The Durutti Columnはあえて逆の静謐なサウンドを追求することで、”オルタナティブ”を作り上げている。

代表的な作品としては、1979年の1stアルバム『The Return of the Durutti Column』である。一貫して静かなギターと打ち込みのリズムによる、ほぼインストの作品だ。

「Sketch for Summer」に代表されるように、美しいギターの音色が中心ではあるが、単調なリズムと鳥のさえずりの効果音が、緊張感をもたらしているように思える。

1989年のアルバム『Vini Reilly』は、最高傑作の評価もある名盤とされている。

その後もVini Reillyによる味わい深いギターを中心とした作品をコンスタントにリリースしていたが、三度の脳梗塞発作により身体障害者と認定された。

Gangway

”Gangway”という単語も、あまり日本人には馴染みのない単語ではないだろうか。”ギャング”に関連する言葉かと最初思ったが、調べてみると舷門という船の上甲板の横側にある出入口だという。

その他にも鉄道では車両同士を結ぶ通路という意味もあり、イギリスでは下院の左右を分ける通路という意味もあるそうだ。

どことなく尖がった語感があるが、その音楽性は全く逆であり、穏やかなものである。

Gangwayは1982年から活動しているデンマーク出身のバンドである。その音楽性は初期と中期で異なっている。

初期はいわゆるネオアコと呼ばれるサウンドであり、1984年の1st『The Twist』や1986年の2nd『Sitting in the Park』などで聴くことができる。

The Smithsなども思わせるようなアコースティックギターと、線の細いボーカルが特徴である。

1991年の『The Quiet Boy Ate the Whole Cake』以降は、シンセポップへと転向している。Pet Shop BoysやNew Orderなどを思わせるようなサウンドである。

いずれの時代それぞれにファンがいるだろうと思われるが、美しいメロディと優しげなサウンドと言う点においては一貫したものがある

1998年の解散後、2017年に再結成。2019年にはアルバム『Whatever It Is』もリリースしている。

Prefab Sprout

このPrefab Sproutも、全く日本人には聞いた言葉のない単語の組み合わせである。意味はPrefab=プレハブ、Sprout=新芽ということらしく、組み合わせても意味不明である。

ただ語感として、筆者は尖がったニューウェイヴのバンドなのか、と最初は思っていた。しかしこれもイメージと違い、ポップロックのバンドである。

1982年にイギリスでデビューしたバンドであり、中心人物であるパディ・マクアルーンのソングライティングが非常に高く評価されている

1984年の1st『Swoon』こそニューウェイヴ色を感じるが、最高傑作にも選ばれる1985年の2nd『Steve McQueen』は非常に洗練されたポップスのアルバムに仕上がっている。

バンドらしさと上質なポップスの間を行ったり来たりしつつ、1990年の『Jordan: The Comeback』が1つの頂点とされる。

その後は、アルバムの構想が上がりつつ、なかなか完成に至らずということが多く、また2004年にオフィシャルサイトが閉鎖された。

しかしパディ・マクアルーンのほぼソロプロジェクトという形で、緩やかにリリースが続いた。後期ほど映画音楽の影響を感じさせる楽曲が増えている印象である。

番外編

最後に番外編として、少々変わった名前だなと筆者が感じたバンドを紹介する。

ここでは、うっかりすると勘違いしそうなバンド名をつけたグループ2つである。

America

1つ目は、Americaである。アメリカ合衆国の国名をグループ名としているが、イギリスで結成されたグループである。

確かに、考えてみれば日本出身者が「日本」というバンド名をつけることはなさそうである。

ただ彼らの父親はロンドンに駐留するアメリカの軍人であり、アメリカンスクールでの仲間で結成されたのだという。

1971年にアルバム『America』でデビュー、同作収録の「A Horse With No Name(名前のない馬)」を1972年にシングルリリースしてヒットした。

フォーキーなサウンドに、爽やかなメロディとコーラスが印象的なグループである。当時はCrosby, Stills, Nash & Youngと比較されることも多かった。

1980年代に入ると、サウンド的にはAORなどを感じさせるものと変化しており、Russ Ballardによる「風のマジック」などがヒットした。

比較的近年もリリースやライブ活動は継続しており、アコースティックなサウンドへの回帰もしているようだ。

Americaという名前ではあるが、やはりイギリスのしっとり美しい旋律が印象的だ。その一方、アコースティックなサウンドにはアメリカも感じさせ、2つの国が融合したようなサウンドに思える。

Steely Dan

2つ目はSteely Danである。筆者だけかもしれないが、この名前をずっと個人名だと勘違いしていた。

Steely Danというミュージシャンがいるのだと思っていたが、これはグループ名である。苗字+名前のようになっているから、割と最近までそう思っていた。

Steely Danは1972年にアルバム『Can’t Buy A Thrill』でデビューした、アメリカのバンドだ。Donald FagenとWalter Beckerによるデュオの体制が主となっていた。

活動当初はバンド形態だったが、ライブを嫌うベッカーとフェイゲンとの間に軋轢が生まれた。

1977年のアルバム『彩(エイジャ)』は全米3位、200万枚を超えるヒット作となった。

ソウルやジャズにラテン音楽の要素を加えた幅広い音楽性、そして洗練された演奏は、後にAORと呼ばれるジャンルに影響を及ぼすこととなった。

1980年の『ガウチョ』をリリース後、1981年にグループは解散。1993年に再結成後は、ライブ活動も再開していた。

2017年にWalter Beckerが亡くなり、現在はフェイゲン単独体制である。

AORの元祖のようなイメージもあるが、音楽性はもっと広いものであり、ジャンルとして括るのは難しいバンドであると筆者には感じられる。

まとめ

今回の記事では、バンド名のイメージとかなり音楽性の異なっているものを紹介した。

筆者はバンド名の語感から、どんな音楽をやるグループなのか、想像してみることが多い。イメージ通りのバンドが割と多いようにも思うが、全く違う場合があるので面白い。

今回紹介したのは、良い意味で期待を裏切られたバンドであった。

バンド名やジャケット写真など、音楽をイメージさせるツールから想像と期待を膨らませる過程も面白いものだ。

サブスクリプション全盛期にあっては、まず聴くことができる状況になったが、音以外のヒントから作品を想像してみるのも、それはそれで楽しい営みだと思う。

今回紹介した以外にも、名前と音楽性が異なるグループは多数あるだろう。こうした音楽の聴き方も1つの楽しみ方ではないか、と思うので、ぜひ他にも探してみていただきたい。

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