陰陽座の「忍法帖」シリーズのルール解説+おすすめ「忍法帖」シリーズの楽曲

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陰陽座
画像出典:|||陰陽座公式庵頁|||

今回は日本のメタルバンド、陰陽座の楽曲を特集してみたい。陰陽座は1999年に結成され、『鬼哭転生』でデビューした、「妖怪へヴィメタルバンド」だ。

音楽的には洋楽のハードロック・ヘビーメタルに日本語歌詞を乗せ、妖怪をモチーフにした楽曲が多いのが特徴である。

今回取り上げたいのは、陰陽座のこだわりが見える「忍法帖」シリーズだ。かなりコンセプトや縛りのあるもので、ぜひコンセプトものが好きな音楽マニアの人には知っていただきたいのだ。

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陰陽座について

陰陽座は、かなり世界観が構築されたバンドであり、まずそのバンドとしてのこだわりっぷりから紹介したい。

メンバーは瞬火(ベース・ボーカル)・黒猫(ボーカル)・招鬼(ギター・ボーカル)・狩姦(ギター)の4名で、それぞれ名前は猫にちなんだ名前が付けられている。

全員が長髪で、和装をしてライブをするなど外見もかなり特徴的だ。かつてはドラマーとして斗羅が在籍していたが、2011年に脱退している。

メインに作曲を行うのは、リーダーでもあるベース・ボーカルの瞬火氏である。この人こそ大変な音楽オタクであり、またこの陰陽座というコンセプトをすべて考えている人だ。

そのこだわりっぷりを示す発言として、「アルバムのコンセプトは次々作まで見据えている」というのを聴いたことがある。

アルバムとしては14枚発売されており、アルバム全体が組曲の形で繋がっている10th『鬼子母神』や、2作同時に発売された11th『風神界逅』、12th『雷神創世』など、コンセプトにも大変こだわっている。

その音楽性については、一貫してハードロック・ヘビーメタルを基調としている。

初期は「人間椅子」を意識した、おどろおどろしいハードロックであったが、女性ボーカルの黒猫の歌声をフューチャーするかのように、中期は歌謡曲的な要素をかなり取り入れていると言う変化はある。

また最近はダウンチューニングや7弦ギターを取り入れ、より現代的なメタルのアプローチを取り入れている点も変化と言える。

ただし継続するためには変化も必要であり、大きく見ると一貫したまま、20年以上にわたり日本でハードロック・ヘビーメタルバンドとして活動を続けている大変稀有なバンドなのだ。

このようにファッションも音楽性もかなりコンセプトのしっかりしたバンドなのだが、楽曲単位でもコンセプトを持っているのが、「忍法帖」シリーズだ。

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「忍法帖」シリーズについて

そんな陰陽座にはデビュー当時から一貫して続けている楽曲シリーズがある。それが「忍法帖」シリーズだ。

この忍法帖シリーズにはいくつか縛りがあり、それは以下の5つだ。(ベスト盤『陰陽珠玉』の解説+α)

  1. 楽曲の長さは4分程度
  2. 歌唱担当は黒猫
  3. 忍法を思わせるギターソロ(狩姦による)
  4. Aメロとサビと言う簡素な構成
  5. キーはA

このような厳しい制約を課した中で、いかに名曲を作れるのか、ということを実行するあたりが、瞬火氏のオタクっぷりが垣間見えるところだ。

それではここから本題の忍法帖シリーズの紹介に入りたい。

今回は入門編におすすめの忍法帖、続いて変化球の忍法帖を紹介し、ルールがどれだけ守られているかも紹介する。

入門編の忍法帖シリーズ

まずは忍法帖シリーズの中の入門編におすすめの楽曲を紹介したい。そしてルールが守られているかどうか、チェックも行った。

甲賀忍法帖

・収録作品:6thアルバム『臥龍點睛』(2005)

テレビアニメ『バジリスク ~甲賀忍法帖~』のオープニングテーマとして起用された、初のタイアップ曲。

ハードロック的なリフをイントロに据えながら、メロディは王道のアニメソングらしくキャッチ―で、陰陽座の代表曲の1つだ。

またこの曲はテレビサイズに編集する必要がないように、ワンコーラスが90秒で終わるように計算されて作られている

忍法帖の縛りにさらに、ワンコーラス90秒の縛りまでつけた、瞬火氏のこだわりが窺える。

  1. 楽曲の長さは4分程度 ◯
  2. 歌唱担当は黒猫 ◯
  3. 忍法を思わせるギターソロ(狩姦による) △(ツインギター)
  4. Aメロとサビと言う簡素な構成 ×(Bメロがある)
  5. キーはA  ◯

鬼斬忍法帖

・収録作品:1stアルバム『鬼哭転生』(1999)

第1作目の忍法帖であり、ライブでも盛り上がる曲だ。かなりアグレッシブな楽曲となっており、ライブではさらに攻撃的になる。

なおライブでは忍法(ギターソロ)は狩姦氏と招鬼氏によるスウィープのツインとなり、見どころとなっている。

また「鬼斬忍法!」と叫ぶ前には、瞬火氏の煽りが入るのも定例となっている。『陰陽珠玉』の特典ディスクにはライブ音源が収められているが、ここでは黒猫氏のシャウトも聴くことができる。

  1. 楽曲の長さは4分程度 ◯
  2. 歌唱担当は黒猫 ◯
  3. 忍法を思わせるギターソロ(狩姦による) ◯(ライブではツイン)
  4. Aメロとサビと言う簡素な構成 ◯
  5. キーはA ◯

妖花忍法帖

・収録作品:4thアルバム『鳳翼麟瞳』(2003)

3枚目のシングル曲。それまでの忍法帖シリーズはメタル調であったが、ここでメロディアスなものを投入した意欲作。

ここから本格的に歌謡曲路線が始まったような気もするが、この時期の瞬火氏のメロディは「」「梧桐の丘」など、目を見張るものがある。

  1. 楽曲の長さは4分程度 ◯
  2. 歌唱担当は黒猫 ◯
  3. 忍法を思わせるギターソロ(狩姦による) ◯
  4. Aメロとサビと言う簡素な構成 ◯
  5. キーはA ◯

変化球の忍法帖シリーズ

縛りの多さゆえに、作品が進むといわゆる「規制緩和」が行われた。

ファンはどこが緩和されるようになったかを楽しむという面もあるので、少し趣の異なる忍法帖シリーズを集めてみた。

涅槃忍法帖

・収録作品:5thアルバム『夢幻泡影』(2004)

前半からサビの構成は忍法帖のルールに概ね則っているものの、後半で大きく展開する。

プログレッシブな演奏に、黒猫氏によるセリフの朗読が乗るという展開は、陰陽座の他の楽曲では見られたことだが、忍法帖で取り入れたのは大きな規制緩和だと思われる。

  1. 楽曲の長さは4分程度 ×(6:35と長い)
  2. 歌唱担当は黒猫 ◯
  3. 忍法を思わせるギターソロ(狩姦による) △(ツイン部分あり)
  4. Aメロとサビと言う簡素な構成 ×(中間で大きく展開あり)
  5. キーはA △(厳密にはAメロはAmではない)

微睡忍法帖

収録作品:6thシングル『組曲「義経」~悪忌判官』(2004)

読みは「まどろみ」忍法帖だ。

この組曲「義経」のシングルにはすべて忍法帖シリーズの楽曲がB面に収録されており、いずれもやや変化球の楽曲だ。

特にこの「微睡忍法帖」はバラード調であり、眠りに誘うという新手の忍法と解釈したら良いのだろうか。

  1. 楽曲の長さは4分程度 ×(5:49と長い)
  2. 歌唱担当は黒猫 ◯
  3. 忍法を思わせるギターソロ(狩姦による) △(ゆったりしたソロ)
  4. Aメロとサビと言う簡素な構成 ◯
  5. キーはA ◯

傀儡忍法帖

・収録作品:7thシングル『組曲「義経」~夢魔炎上』(2004)

読みは「くぐつ」忍法帖だ。A面がかなり長い曲のためか、こちらはかなり短い曲。

そして陰陽座としても珍しいブルーステイストの強い楽曲。歌唱が黒猫氏であること以外は、大胆に規制緩和がなされている。

  1. 楽曲の長さは4分程度 ×(3:06と短い)
  2. 歌唱担当は黒猫 ◯
  3. 忍法を思わせるギターソロ(狩姦による) △(両氏によるソロ)
  4. Aメロとサビと言う簡素な構成 △(転調する部分あり)
  5. キーはA △(Aではあるが転調あり)

覇道忍法帖

・収録作品:7thアルバム『魔王戴天』(2007)

Aメロまでの進行はしっかりとルールに則っているが、サビで瞬火氏が歌唱するという、初めて歌唱ルールが破られた。

これは”変わり身の術”という忍法と解釈して良いのだろうか。その分、ギターソロはかなり控えめになっており、ソロで転調し、その後に曲展開があるのも、掟破りである。

しかし全体を通じてシンプルながらドラマチックでかっこいい曲だ。

  1. 楽曲の長さは4分程度 △(3:26と短め)
  2. 歌唱担当は黒猫 ×(サビは瞬火氏)
  3. 忍法を思わせるギターソロ(狩姦による) ×(ツインによるリフに近いソロ)
  4. Aメロとサビと言う簡素な構成 △(展開する部分あり)
  5. キーはA △(途中で転調してBmになる)

まとめ

陰陽座の世界観のこだわりと、中でも楽曲単位でもこだわっている「忍法帖」シリーズに焦点を当てて紹介してきた。

これだけの縛りの中で続けるというのは、一種のマンネリの美学と言うのが関わってくる。

そして続けるからには、あえて掟破りも必要であり、ファンは心地よく裏切られるのであれば、掟破りも面白いと感じられる。

守るべきルールと、あえて掟破りをする部分の絶妙なバランスを解している瞬火氏はさすがと言える。

新しい話題としては、2018年には『桜花忍法帖』がシングルカットされており、なおも忍法帖シリーズの可能性が広がっているところだ。

最後にボーカルの黒猫氏が突発性難聴の疑いがあるとの情報がオフィシャルページに出ていた。無事に回復し、また素晴らしいボーカルを聴かせてくれることを祈りたい。

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