ジャンル不明・無国籍な音楽を鳴らす、東洋一のサウンドマシーン、クレイジーケンバンド。結成から25年を迎えるバンドが、2021年に初のカバーアルバム『好きなんだよ』をリリースした。
多様な音楽を吸収し、そしてアウトプットさせてきた横山剣氏が、どんなカバーを歌うのか注目が集まった。そして見事に時代・ジャンルを飛び越えた素晴らしいカバー作品になっている。
そこでこの記事では、クレイジーケンバンドのカバーアルバム『好きなんだよ』の聴きどころをまとめ、作品の魅力に迫りたい。
そしてクレイジーケンバンド作品の中で、他にもカバーが聴けるものもピックアップして紹介している。
クレイジーケンバンドについて
ごく簡単にクレイジーケンバンドの特徴をまとめておこう。
クレイジーケンバンドは1997年頃に横浜で結成された。
結成当時のメンバーは既に30代後半であった。ボーカルの横山剣は1981年にクールスRCでデビューし、それぞれバンド活動を経てたメンバーによって、結成されたのだった。
2002年に発表した「タイガー&ドラゴン」が、2005年に楽曲をもとにしたドラマ「タイガー&ドラゴン」の主題歌となったことで一躍有名になる。
活動初期には、”昭和歌謡”をイメージさせる楽曲が多かったが、そのイメージが独り歩きしてしまい、一時期は歌謡曲テイストを薄め、ソウルを前面に押し出した作品がみられた。
現在は、ソウルから歌謡曲、ジャズやファンクにボサノバと多様なジャンルを行き交う自由な音楽スタイルになっている。コンスタントに作品を作り続け、2020年には19th『NOW』をリリースした。
横浜市のゴミ分別プロジェクト『ヨコハマはG30』のテーマソング「いいね! 横浜G30」、業務用食品会社の西原商会の社歌「世界、西原商会の世界!」など、音楽業界だけでなく様々な楽曲を作っている。
クレイジーケンバンドの魅力は、豊かな音楽性に加え、アジアを中心に多国籍な香り漂う楽曲群である。
横浜と言う土地柄がそうさせたのか、いろんな国の音楽が入り乱れ、どこか不可思議な世界観はコミカルにさえ感じられることもある。
良い曲でかっこよくて、ちょっと笑える、それがクレイジーケンバンドの魅力である。
なおクレイジーケンバンドのおすすめアルバムについては、下記の記事に詳しく書いている。
カバーアルバム『好きなんだよ』レビューと聴きどころ
多様なジャンルを行き交うクレイジーケンバンドが、2021年にカバーアルバム『好きなんだよ』をリリースした。いったいどんな選曲で、どんなカバー作品になっているのか。
ここからはカバーアルバム『好きなんだよ』の作品について掘り下げ、聴きどころとなるポイントを押さえたい。
アルバム概要
まずはアルバムの基本情報である。
<初回限定盤(Blu-Ray付)>
<初回限定盤(DVD付)>
<通常盤>
- 発売日:2021年9月8日
- レーベル:ユニバーサルシグマ
- 発売形態・価格:初回限定盤(CD+Blu-ray:7,800円+税、CD+DVD:6,800円+税)、通常盤(CDのみ:3,000円+税)
『好きなんだよ』は、クレイジーケンバンドが手掛ける初めてのカバーアルバムである。カバー自体は何曲かアルバムの中で発表してきたが、カバーアルバムはこれまでなかった。
ジャケットはイラストレーターの山口はるみが担当している。Blu-ray付き初回限定盤、DVD付き初回限定盤、通常盤の3形態で発売。
初回限定盤には2020年10月30日に15年ぶりに行われた日本武道館公演の模様と、2021年6月19日に行われたファンクラブイベントでのカバー曲の披露が収録されている。
<収録楽曲>
楽曲タイトルに加え、オリジナル歌手・オリジナル年・収録作品(オリジナルアルバムを優先し、ない場合はベストアルバム)、作詞・作曲の順に楽曲情報を、以下の表に示した。
no. | タイトル | オリジナル | オリジナル年 | 収録作品 | 作詞 | 作曲 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | モンロー・ウォーク | 南佳孝 | 1979年 |
リンク
| 来生えつこ | 南佳孝 |
2 | ルビーの指環 | 寺尾聰 | 1981年 |
リンク
| 松本隆 | 寺尾聰 |
3 | プラスティック・ラブ | 竹内まりや | 1984年 |
リンク
| 竹内まりや | 竹内まりや |
4 | DOWN TOWN | シュガー・ベイブ | 1975年 |
リンク
| 伊藤銀次 | 山下達郎 |
5 | 冬のリヴィエラ | 森進一 | 1982年 |
リンク
| 松本隆 | 大瀧詠一 |
6 | eye catch * Kokoro kara kimiwo | |||||
7 | スカイレストラン | ハイ・ファイ・セット | 1975年 |
リンク
| 荒井由実 | 村井邦彦 |
8 | やさしさに包まれたなら | 荒井由実 | 1974年 |
リンク
| 荒井由実 | 荒井由実 |
9 | 接吻-kiss- | ORIGINAL LOVE | 1993年 |
リンク
| 田島貴男 | 田島貴男 |
10 | 時間よ止まれ | 矢沢永吉 | 1978年 |
リンク
| 山川啓介 | 矢沢永吉 |
11 | 夏のクラクション | 稲垣潤一 | 1983年 |
リンク
| 売野雅勇 | 筒美京平 |
12 | eye catch *Aishiteruyo | |||||
13 | 最後の雨 | 中西保志 | 1992年 |
リンク
| 夏目純 | 都志見隆 |
14 | 雨に泣いてる | 柳ジョージ&レイニーウッド | 1978年 |
リンク
| 柳ジョージ | 柳ジョージ |
15 | 横須賀ストーリー | 山口百恵 | 1976年 |
リンク
| 阿木燿子 | 宇崎竜童 |
16 | よこはま・たそがれ | 五木ひろし | 1971年 |
リンク
| 山口洋子 | 平尾昌晃 |
17 | 空港 | テレサ・テン | 1974年 |
リンク
| 山上路夫 | 猪俣公章 |
18 | 難破船 | 加藤登紀子/中森明菜 | 1984年/1987年 |
リンク
| 加藤登紀子 | 加藤登紀子 |
19 | eye catch * Motto yokumisete | |||||
20 | アフリカ象とインド象 | 朱里エイコ | 1973年 |
リンク
| 八坂裕子 | 冨田勲 |
21 | あまい囁き | 中村晃子 ナレーション:細川俊之 | 1973年 |
リンク
| Gianni Ferrio, Giancarlo Del Re, Leo Chiosso | Gianni Ferrio, Giancarlo Del Re |
アルバムの聴きどころ
本題でもある、『好きなんだよ』のレビューを行っていきたい。ここではアルバムの聴きどころとして、以下の3つの点から魅力を語ってみようと思う。
- 独特な選曲と、ジャンルに合わせた流れ
- 横山剣氏の圧倒的な歌唱・他メンバーのリード曲も見どころ
- カバー作であると同時に、横山剣氏のルーツ・名曲紹介アルバム
独特な選曲と、ジャンルに合わせた流れ
まずは、カバーアルバムはどんな楽曲を選ぶのか、という点で個性が垣間見える。この作品でもクレイジーケンバンドらしい、そして横山剣氏らしい選曲を楽しむことができる。
選ばれているのは1970年代~90年代前半までの日本の歌謡曲・ポップス、そして演歌である。
年代に注目すると、クレイジーケンバンドが結成されたのが1997年であるから、バンド結成前のいわゆる”ルーツ”になる楽曲である。
もちろん横山氏自身は1981年にデビューしている訳だが、選ばれた曲を作っているミュージシャンは偉大な先達ばかりであり、まさにタイトル通り『好きなんだよ』と呟きたくなる曲ばかりだ。
細かく選曲を見ていくと、非常によくカバーされる「最後の雨」「やさしさに包まれたなら」などの定番から、そもそもオリジナルが知られていない「アフリカ象とインド象」まで、独特な選曲である。
ここからもただ売れそうなカバーアルバムを作るのではなく、とにかく好きな楽曲、そしてクレイジーケンバンドとして演奏したい楽曲を選んでいったように見える。
横山氏自らによる全曲解説動画が、全6回にわたりYouTubeに公開されている。楽曲にまつわるエピソードなどが紹介されているので、興味のある人はそちらもぜひご覧いただきたい。
そしてアルバムと言う点でみると、実に流れが考えられた作品になっている点も興味深い。クレイジーケンバンドは”eye catch”を入れることで、アルバムの中で場面を作っている。
本作もカバー楽曲ながら、eye catchによって、大きく4つの場面に分かれている。
1~5曲目までは、日本のシティポップを代表するシンガーソングライターによる楽曲が並んでいる。南佳孝、山下達郎、大瀧詠一…、名だたるミュージシャンによる名曲詰め合わせと言った様相だ。
近年では日本のシティポップが海外から再評価される動きも見られ、70年代後半~80年代前半に歌謡曲とは異なるオシャレでソウルフルな感覚を持った名曲が多数生まれていることがわかる。
寺尾聰氏による「ルビーの指環」も、この流れで聴くとまた違った趣があるだろう。
続くブロックの7~11曲目は、ニューミュージック~横山剣印の楽曲が並んでいる。
最初の2曲は”ユーミン”のゾーンであり、作詞を担当したハイ・ファイ・セットの「スカイレストラン」、そして荒井由実時代の代表曲の1つ「やさしさに包まれたなら」が並ぶ。
ニューミュージックゾーンでもあり、ここから横山氏が好んだ歌謡曲・ポップスが続いていく。注目は、ORIGINAL LOVEの1993年のヒット曲「接吻-kiss-」である。
本作の中では数少ない年下のミュージシャンの楽曲で、93年ではあるが最も新しい。
2003年にNHK「夢・音楽館」内でクレイジーケンバンドとORIGINAL LOVEが「接吻-kiss-」でコラボしていた。こうした過去のつながりも、本作では懐かしむことができる。
楽曲解説動画によれば、8~10曲辺りのゾーンは横山氏は「パワースポット」とも呼んでおり、横山氏が何かパワーを感じる楽曲が並んでいる。
音楽的にも、そしてクレイジーケンバンドの世界観ともリンクするような楽曲が並んでいると言えよう。
続く13~18曲目にかけては、徐々にディープな世界に入り込んでいくゾーンである。
中西保志氏のカラオケ人気曲「最後の雨」から、”雨”つながりで、柳ジョージ&レイニーウッドの「雨に泣いてる」の流れも面白い。
そして当時2年間だけ東京に住んでいた横山氏が「雨に泣いてる」を聴き、横浜に帰りたくなったという。そんな横浜・横須賀サウンドゾーンへと、アルバムは続いていく。
「横須賀ストーリー」「よこはま・たそがれ」と、タイトルに地名の入る楽曲をあえて連続させている。ライブではカバーしていたという「よこはま・たそがれ」から、演歌ゾーンに入る。
「空港」「難破船」など演歌的ではあるが、ここに並ぶ曲も横山氏の独特なセンスのもと、”電波”を感じるような楽曲が並んでいる。
最後の20、21曲目は、アルバムの中で最もディープな奥地である。”クレイジーケンズワールド”とも言える、ちょっとトンチンカンで独特なムードが漂う2曲である。
「アフリカ象とインド象」は本作で最もマニアックな選曲だが、作曲は冨田勲氏で、独特な魅力を放つ1曲。そしてラスト「あまい囁き」は、イタリアの楽曲をダリダとアラン・ドロンがカバーした楽曲。
日本語でのカバーは、中村晃子による歌唱・細川俊之によるナレーションが有名である。
横山氏としては最も思い入れのあるカバーと述べているが、歌とナレーションによる楽曲をカバーアルバムに入れる人も珍しい。
ここまでアルバムの流れに着目して、本作の楽曲を見てきた。
まとめると、後に行けば行くほど、ディープなクレイジーケンバンド・横山剣ワールドに浸れる作品になっていると言える。
そして各楽曲は緩やかにテーマで結びつき、いくつかのパートに分かれていることも分かった。
多ジャンルの楽曲が並ぶカバーである。散漫な作品にならぬよう、アルバムという単位でも意識的に選曲・配置が行われている点もポイントが高い。
アルバムを通して聴くも良し、1曲ずつじっくりと聴くもよし、といった作品である。
繰り返しになるが、個々の楽曲については、最初にリンクを貼った横山氏自身による解説が詳しく、音楽マニア話が聴けるので大変面白い。
横山剣氏の圧倒的な歌唱・他メンバーのリード曲も見どころ
続いて、カバーを歌うシンガーと言う点から見どころを押さえておきたい。
クレイジーケンバンドのボーカル横山剣氏は、本作でも抜群の歌唱力で、それぞれの楽曲を表現している。
以下のトレーラーをご覧いただければ、表現力豊かに楽曲を歌い上げていることがわかる。
楽曲によっては、横山氏のイメージと近いものもあれば、ずいぶんとかけ離れたものも存在する。
たとえば矢沢永吉の「時間よ止まれ」などは、横山氏が憧れた矢沢氏の歌唱を受け継いでおり、あまり原曲のイメージから離れないようにしたという。
一方で中西保志の「最後の雨」など、原曲はハイトーンで透明感のあるボーカルは横山氏のイメージとは異なる。
そうした原曲と離れている場合には、アレンジの面で楽曲の雰囲気を変え、クレイジーケンバンドらしいサウンドに生まれ変わっている。
アレンジについては後述するが、原曲をリスペクトしつつ、クレイジーケンバンドの作品として横山氏の歌唱が活き活きとする形を探ったところも、見どころである。
また横山氏以外のボーカリストによる歌唱の楽曲が入っている点も見どころの1つである。
まずは、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」は、Ayesha(アイシャ)による歌唱である。何としても原曲のキーでないと、別物になるということで、歌ってもらったようだ。
彼女自身も好きな楽曲だという。彼女のグルーブがそうさせるのか、不思議と日本語に聞こえないような歌がとてもかっこいい。
また柳ジョージ&レイニーウッドの「雨に泣いてる」は、スモーキー・テツニによる歌唱だ。
こちらも原曲を最大限にリスペクトしながら、テツニ氏のハスキーなボーカルがより”野郎感”を増して、見事にハマっている。
その他にも「やさしさに包まれたなら」は、横山剣・Ayesha・スモーキー・テツニの3人によるハーモニーが楽しめるし、「DOWN TOWN」もAyesha・スモーキー・テツニのコーラスが光る。
そして横山氏が以前から実現させたかった「あまい囁き」のカバーでは、Ayeshaが歌い、ギターの小野瀬雅生が”あまい囁き”(ナレーション)を担当している。
横山氏いわく、Ayeshaのボーカルに漂う”昭和感”がこの曲にハマり、そして以前から小野瀬氏の声でナレーションをやってほしかった、ということである。
このように、横山氏の圧倒的な歌唱とともに、脇を支えるボーカリストの活躍により、より彩り豊かなカバーアルバムへと磨きがかかっている点も見逃せない。
カバー作であると同時に、横山剣氏のルーツ・名曲紹介アルバム
本作はカバーアルバムである訳だが、それ以外の意味合いも含んだアルバムだと思う。1つにはクレイジーケンバンド、横山剣氏のルーツをたどれる作品と言う意味だ。
作品概要で述べた通り、本作は1970年代前半から90年代前半までの国内の楽曲で構成されている。
つまり横山氏が中学生の多感な時期から大人になっていく過程で聴いた、血肉になっているような楽曲ばかりなのだ。
そして名曲が山のように生み出された時代の中で、横山氏がグッと来た楽曲であり、それはクレイジーケンバンドの世界観に通じる楽曲ばかりである。
横浜と言う土地の、都会的ながら多国籍な文化がごちゃ混ぜになったカオス感、あるいは高度経済成長の雰囲気や車、街並みなど、風景が浮かんでくるような楽曲が選ばれているようにも思う。
横山氏と同年代の人にとっては、同じ時期に聴いた懐かしさを感じることができるだろう。一方でより若い世代の人にとっては、名曲を一気に知ることができるアルバムとも言えるのではなかろうか。
先に紹介した横山氏による全曲紹介の動画では、本作に収録された楽曲への溢れんばかりの愛が語られる。
きっとまだこれらの楽曲を知らない人に、その魅力が伝わって欲しいと言う思いもあったのではないか。そして名曲を知る作品としても、十分に楽しめる作品となっているように思う。
その理由として、原曲へのリスペクトが感じられるアレンジとなっている点が挙げられる。
本作は、オリジナルのアレンジに忠実な楽曲が割と多くを占められている。カバーにありがちなのは、原曲とあまりにかけ離れていて、全然聴く気になれないものもある。
やはりオリジナルの大枠のリズム、コード進行、印象的なリフなどは、やはり踏襲してほしいのがリスナーの願いである。
本作では、そうした劣悪なアレンジの改変は行われておらず、むしろ丁寧にオリジナルを解釈し、クレイジーケンバンド流のアレンジが加えられている。
まず、何度もカバーされるような超定番曲は、ややオリジナルから変更されているものが多い。
オリジナルの歌手に合ったアレンジと、横山氏の歌唱に合ったアレンジが大きく違う場合なども、変更されているようだ。
たとえば、山口百恵の「横須賀ストーリー」ではスカのアレンジになっている。”横須賀”であり、”これっきりですか”からスカを採用した遊び心も見られる。
ただオリジナルもダンサブルなビートであり、原曲から広げて解釈されたものとも見ることができる。
「やさしさに包まれたなら」も大きくリズムを変更しているが、メロディのパンチが強いため、多少のアレンジ変更ではびくともしない印象である。
一方で、オリジナルに忠実に見えても、細かいところではアレンジを加えている楽曲は多いようだ。
下記の動画で「冬のリヴィエラ」について横山氏が語っている通り、オリエンタルなフレーズを入れたり、デジタル録音をオープンリールに移したりと、後ろであれこれ工夫しているようだ。
こうしたアレンジや演奏、録音の工夫は、オリジナルの楽曲をクレイジーケンバンド流に解釈し、そして過去の楽曲を現代に蘇らせる試みである。
一つひとつの工夫が、単なるボーカルカバー的な意味ではなく、バンドとしてカバー曲を再構成していくことに繋がっている。
これが、カバー作品としても、そしてクレイジーケンバンドのルーツを知れる作品としても楽しめる所以ではないかと思う。
クレイジーケンバンドの他の作品で聴けるカバー楽曲
カバーアルバム『好きなんだよ』以外にも、クレイジーケンバンドではカバー楽曲が収録された作品がある。クレイジーケンバンド名義でリリースされたものを中心に紹介していこう。
一部にはトリビュート盤などオムニバス作品も紹介している。
COBALT HOUR
- 収録作品:オムニバス盤『Queen’s Fellows yuming 30th anniversary cover album』(2002)
- オリジナル歌手:荒井由実
- オリジナル収録作品:『COBALT HOUR』(1975)
MVも制作され、特別ゲストに松任谷由実ご本人が登場する。
甘い日々
- 収録作品:シングル『甘い日々/あ、やるときゃやらなきゃダメなのよ。』(2003)
- オリジナル歌手:キャロル
- オリジナル収録作品:『ファースト』(1974)
キャロルの3rdアルバムに収録された楽曲のカバー。クレイジーケンバンドのシングルのA面曲がカバーであったのは本作だけである。
美人
- 収録作品:アルバム『777』(2003)
- オリジナル歌手:申重鉉(シン・ジュンヒョン)
- オリジナル収録作品:『ファースト』(1974)
韓国で大ヒットした楽曲で、サイケデリックロックを感じさせつつ、ジミヘンドリックスのギタープレイも思わせるような楽曲である。
あの鐘を鳴らすのはあなた
- 収録作品:デジタルシングル『あの鐘を鳴らすのはあなた』(2008)
- オリジナル歌手:和田アキ子
- オリジナル収録作品:シングル『あの鐘を鳴らすのはあなた』(1972)
デジタルシングルでのリリース。2001年にWhat’s Love?がカバーしたバージョンに横山剣が参加している。
また逢う日まで
- 収録作品:オムニバス盤『The Popular Music -筒美京平トリビュート-』(2009)
- オリジナル歌手:尾崎紀世彦
- オリジナル収録作品:シングル『また逢う日まで』(1971)、アルバム『尾崎紀世彦セカンド・アルバム』(1971)
作曲家の筒美京平氏の楽曲を集めたアルバムに参加した。
無条件
- 収録作品:アルバム『MINT CONDITION』(2010)
- オリジナル歌手:朴尚哲(パク・サンチョル)
- オリジナル収録作品:『無条件』(2005)
韓国トロットと呼ばれる、演歌のようなメロディとダンスビートが融合したジャンルの大ヒット曲。日本人としては初のカバーであり、2015年に日本語詞で川崎麻世もカバーしている。
友だちはいいもんだ
- 収録作品:シングル『いっぱい いっぱい』(2011)
- オリジナル歌手:劇団四季
- オリジナル収録作品:ミュージカル『ユタと不思議な仲間たち』(1977)
ミュージカル『ユタと不思議な仲間たち』の劇中歌をカバー。
宇宙旅行の渡り鳥
- 収録作品:アルバム『FLYING SAUCER』(2013)
- オリジナル歌手:小林旭
- オリジナル収録作品:シングル『宇宙旅行の渡り鳥』(1964)
小林旭氏の”渡り鳥シリーズ”の楽曲のカバー。宇宙へと飛び出す独特な世界観は、クレイジーケンバンドとの相性は抜群だ。
笑って許して
- 収録作品:アルバム『アッコがおまかせ ~和田アキ子50周年記念トリビュート・アルバム~』(2018)
- オリジナル歌手:和田アキ子
- オリジナル収録作品:シングル『笑って許して』(1970)
横山氏によるコメントが特設サイトに掲載されている。
まとめ
今回の記事では、クレイジーケンバンドが2021年にリリースした初のカバーアルバム『好きなんだよ』の魅力・聴きどころをまとめた。
カバー作品にも、色々なタイプがあるが、本作はクレイジーケンバンド・横山剣氏のルーツをたどることができる作品としての位置づけが強そうである。
そして過去の名曲を、現代のサウンドでいかに生まれ変わらせることができるか、という試みも行っているように思えた。
ここには、音楽マニアとしての横山氏のこだわりを強く感じるところであり、過去の名曲に対する強い愛を感じるものである。
また、本作は70年代~90年代の日本の良質なポップスの歴史をたどる作品でもある。今回カバーされた楽曲を軸に、オリジナルを歌っているミュージシャンの作品に触れるのもおすすめだ。
筆者自身も今回の収録楽曲全てを知っていた訳ではなかった。新たな音楽的な刺激を受けて、また音楽を聴く楽しみが増えたのだった。
オリジナルを聴いてきた世代も、これから追いかけようと思う若い世代にも、音楽的な好奇心をそそられるアルバムになっていると思った。
<据え置き型の音楽再生機器に迷っている人におすすめ!>
Bose Wave SoundTouch music system IV
これ1台でインターネットサービス、自身で保存した音楽、CD、AM/FMラジオを聴くことができる。コンパクトながら深みがあり、迫力あるサウンドが魅力。
自宅のWi-FiネットワークやBluetooth®デバイスにも対応。スマートフォンアプリをリモコンとして使用することも可能。
コメント