妖怪ヘヴィメタルバンド陰陽座は結成から20年を超え、精力的に活動を続けている。
女性ボーカル黒猫の伸びやかな歌唱、そして正統派ヘビーメタルのサウンドが魅力のバンドだ。そしてリーダーである瞬火が作る美しいメロディラインも特徴である。
日本人にとってもなじみ深い”歌謡曲”要素の強い楽曲も多数存在するため、今回は陰陽座の中で”歌謡曲”を感じさせる名曲を集めてみた。
定番からレア曲まで、新旧の楽曲から厳選したプレイリストを作成した。ぜひプレイリストとともにお楽しみいただきたい。
陰陽座の作品と変化のまとめ
まずは陰陽座の楽曲にはどのようなものがあり、特徴を持つのか、簡単にまとめてみたい。陰陽座のアルバムを振り返りながら、音楽性を見ていこう。
陰陽座は1999年に黒猫・瞬火・招鬼・狩姦により結成され、ドラムに斗羅が加入して5名のバンドとなる。
インディーズ時代の1st『鬼哭転生』2nd『百鬼繚乱』は、日本のハードロックバンド人間椅子に影響を受けたような、おどろおどろしいハードロックを中心にした楽曲だった。
一方でメイクを施し、和装でライブをすることも一貫しており、当初はビジュアル系の括りの中にもあった。瞬火氏のボーカルスタイルも、ビジュアル系に近いものがあったように思う。
2001年にマキシシングル『月に叢雲花に風』でメジャーデビューし、徐々にポップな要素を取り入れるようにもなった。
4th『鳳翼麟瞳』5th『夢幻泡影』では、ダークな要素も残しつつ、ポップな楽曲が増え、メジャーシーンでの注目度も上がっていく。
6th『臥龍點睛』に収録の「甲賀忍法帖」がテレビアニメ『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』の主題歌となり、アニメソングらしいキャッチーな楽曲は代表曲の1つである。
音楽的にはポップな方向に向かっていたものの、続く7th『魔王戴天』~9th『金剛九尾』ではポップさとメタルの要素を融合させ、より音楽的には洗練されたものへとなっている。
なお2009年にドラムの斗羅が脱退しており、9th『金剛九尾』まではサポートで参加している。
続く10th『鬼子母神』はトータルコンセプトアルバムであり、全てが組曲でつながっている。そして初のダウンチューニングが施され、全曲1音下げチューニングで演奏されている。
この頃より、サポートメンバーとしてドラムには土橋誠氏、キーボードに阿部雅宏氏が定着し、サウンド面で向上がみられた。バンドサウンドを中心にしつつも、色彩豊かなサウンドになっている。
続く11th『風神界逅』12th『雷神創世』は2枚同時発売と、コンセプチュアルな作品が続いている。13th『迦陵頻伽』は黒猫の歌をフューチャーした、総決算的内容となった。
現時点最新作の14th『覇道明王』は、改めてメタルに回帰した作品。13thより7弦の楽器を使用し、より現代的なサウンドも取り入れるように変化している。
陰陽座の音楽は、少しずつ変化を遂げながらも、デビュー時からポップさとメタルの両者の要素を持っている。ただアルバムの中では、そのバランスが作品によって異なることが多い。
陰陽座のメロディが良い歌モノ名曲紹介
ここまで陰陽座の作品と音楽性について見てきた。ここからは本題である。
陰陽座の楽曲の中から、”歌謡曲”の要素を感じられるものを選んでプレイリストを作ってみた。
歌謡曲が何を指すのか、ということも難しいが、耳馴染みやすいメロディがあることがまず前提である。そしてAメロ・Bメロ・サビのような分かりやすい展開のものを選んでいる。
サウンドはメタルであっても、メロディと展開だけ取り出すと、歌謡曲的なものを選んでいるということだ。
プレイリストはSpotifyにて公開している。各楽曲について、選んだポイントなどコメントを付した。
醒
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:4thシングル『醒』、ベストアルバム『陰陽珠玉』
陰陽座の楽曲の中でも、屈指の明るさを誇る楽曲であり、ハードポップ的な楽曲である。冒頭から歌が始まる展開も、メタルではあまりないものである。
この曲や『鳳翼麟瞳』の時代は、歌謡曲要素を前面に押し出し始めた時期であり、名曲がたくさんある。プレイリストの最初はこの曲しかないと思った。
面影
- 作詞:黒猫、作曲:招鬼
- 収録アルバム:4thアルバム『鳳翼麟瞳』
4thアルバム『鳳翼麟瞳』の中でもレアな楽曲であるが、最も歌謡曲を感じさせるもの。作詞・作曲があまりない組み合わせであり、新鮮である。
しかしファンの間では人気の高い楽曲のようだ。リフとしてはメタルを感じさせつつ、サビのメロディはわかりやすく、非常によくできた楽曲である。
氷の楔
- 作詞・作曲:黒猫
- 収録アルバム:1stアルバム『鬼哭転生』
ボーカル黒猫氏によるバラード楽曲であり、このリストには絶対に欠かせない楽曲であろう。雪女をテーマにした楽曲であり、冬の厳しさを感じさせるピアノが美しい。
メロディラインはまさに歌謡曲そのものと言って良いだろう。プレイリストの流れとしても、アッパーな曲が続いたので、いったんクールダウンの意味合いもある。
刃
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:13thアルバム『迦陵頻伽』
1stアルバムの曲から、近年の楽曲を並べても違和感がないのが陰陽座だ。陰陽座らしいアッパーながら美しいメロディラインが魅力である。
シングル化はされていないものの、アルバムの中では推し曲。キーボードが効果的に用いられており、アレンジ面での向上はずいぶんと感じられるだろう。
妖花忍法帖
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:2ndシングル『妖花忍法帖』4thアルバム『鳳翼麟瞳』など
陰陽座のポップ路線を切り開いた楽曲である。クリーンのカッティングから始まり、妖艶な黒猫氏のボーカルが印象的だ。
陰陽座には「忍法帖シリーズ」として作られている楽曲があり、明確なルールを設けて制作されている。以前当ブログでは「忍法帖シリーズ」について詳しく書いた記事が以下にある。
ゆきゆきて青し
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:15thシングル『青天の三日月』
シングル『青天の三日月』のカップリング曲というレアなナンバーだ。楽曲としては、80年代の歌謡曲風なバンドサウンドのポップスと言う印象である。
陰陽座はシングルのカップリング曲で実験的な楽曲を収録することが時々ある。ぜひカップリングまで含めて、楽曲を聴いてみてほしい。
慟哭
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:12thシングル『相剋/慟哭』、9thアルバム『金剛九尾』
両A面シングル『相剋/慟哭』に収録された楽曲で、王道のバラード楽曲だ。黒猫氏のボーカルをじっくりと味わうことができる名曲である。
これまではバラードであっても、基本はバンドで演奏できるアレンジで構成されていた。しかしこの楽曲から、曲調に合わせてキーボードを主体とすることが始まっていったように思う。
轆轤首
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:13thアルバム『迦陵頻伽』
アルバム『迦陵頻伽』は歌モノの楽曲が多いが、中でもポップさが際立つのがこの曲。いわゆる4つ打ちビートで、ダンス曲となっているが、これも陰陽座では珍しくないことだ。
なお4thアルバム『鳳翼麟瞳』に収録の「飛頭蛮」は同じ”ろくろくび”であり、このアンサーソングが「轆轤首」である。同じメロディが使われているなど、マニアックな楽しみ方ができる。
甲賀忍法帖
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:9thシングル『甲賀忍法帖』、6thアルバム『臥龍點睛』など
言わずと知れた陰陽座の代表曲であり、テレビアニメ『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』の主題歌である。おどろおどろしいメタルの要素はここでは感じさせず、アニソンらしい曲だ。
主題歌として流れることに対しても、瞬火氏はただならぬこだわりがあったようだ。テレビサイズと呼ばれる90秒以内に、ワンコーラスがきっちり収まるように作られているのである。
微睡忍法帖
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:6thシングル『組曲「義経」〜悪忌判官』
『組曲「義経」』のシングル3枚には、いずれもカップリングに「忍法帖シリーズ」の曲が収録されている。中でも異色のバラード曲がこの「微睡忍法帖」である。
”まどろみ”とタイトルにあるように、アンビエント風の音作りになっている。黒猫氏の伸びやかなボーカルをじっくりと聴きたい楽曲である。
月に叢雲花に風
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:1stシングル『月に叢雲花に風』、3rdアルバム『煌神羅刹』など
陰陽座のメジャーデビューシングルであり、ポップな要素を前面に押し出した楽曲である。妖艶で不気味な要素も残しつつ、サビでは突き抜けたキャッチーなメロディが心地よい。
初期の陰陽座は人間椅子の湿り気のあるハードロックを志向していたが、この楽曲でオリジナリティをはっきりと示したとも言える。ポップで力強い楽曲も陰陽座の魅力の1つであろう。
鼓動
- 作詞:瞬火、作曲:狩姦
- 収録アルバム:5thシングル『睡』、5thアルバム『夢幻泡影』など
ギター狩姦氏が自身について作詞してほしいと瞬火氏に依頼して作られたと言う曲。狩姦氏の楽曲の中でも、人気の高い楽曲であろう。
非常に明るくポップな楽曲であり、ライブでも大いに盛り上がる。サビのツインボーカルによるハモりが心地よく、転調を巧みに組み込んで、ボーカルの割り振りも絶妙だ。
眼指
- 作詞:瞬火、作曲:狩姦
- 収録アルバム:11thアルバム『風神界逅』
もう1曲狩姦氏の楽曲を取り上げてみた。優しげなアルペジオから始まり、全体的に浮遊感のあるゆったりとした楽曲である。
狩姦氏の楽曲の魅力の1つは、この独特な浮遊感である。ギタープレイとしてはメタル色がかなり強いが、楽曲はポップなものも多く作っている印象である。
蜩
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:12thアルバム『雷神創世』
歌モノが多い『風神界逅』と対になるアルバム『雷神創世』に収録されたバラード。ハードさを前面に押し出した曲が多い中で、キーボードを多用したアレンジの楽曲となっている。
和風のアレンジ、そして黒猫氏の儚げなボーカルが非常に美しい。初期に比べるとアレンジ面で格段に向上していることが感じられる楽曲でもあろう。
にょろにょろ
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:8thアルバム『魑魅魍魎』
このプレイリストも終盤に差し掛かり、ライブの後半で演奏されるような楽曲を集めた。原点に戻り、妖怪をテーマにしたアルバム『魑魅魍魎』の最後に収録された楽曲だ。
印象的なサビから始まる楽曲構成も、ポップス的なアプローチである。陰陽座のアルバムのラストにはポップな曲が配置されるが、毎回少しずつアプローチが異なり、引き出しの多さを感じさせる。
梧桐の丘
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:3rdシングル『鳳翼天翔』、ベストアルバム『陰陽珠玉』
シングル『鳳翼天翔』のカップリングであり、序曲である「焔ノ鳥」「鳳翼天翔」に続く連作である。そのため同じフレーズがすべての曲で使用されている。
バンドサウンドながらメロディは美しいミディアムバラード。サビのメロディが印象的であり、男女のユニゾンによるボーカルが効果的に取り入れられている。
舞いあがる
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:4thアルバム『鳳翼麟瞳』、ベストアルバム『陰陽珠玉』
初期の陰陽座では考えられなかったようなポップな楽曲である。そしてダンスビートを取り入れ、扇子を持ってライブでは盛り上がることができる重要な楽曲だ。
当時はここまでポップな楽曲は賛否両論あったと思われるが、とにかく良い曲なのである。”うたのおねえさん”的な黒猫氏のボーカルも、溌剌としてとても良い。
風人を憐れむ歌
- 作詞・作曲:瞬火
- 収録アルバム:13thアルバム『迦陵頻伽』
プレイリスト最後には、立て続けに明るくポップな楽曲を配置してきた。名盤『迦陵頻伽』のラストに配置されたこの曲は、爽やかでありつつ、どこか名残惜しさのような悲しさも持っている。
そして「舞いあがる」と並べることで、サウンド面での進化が改めて確認できる。広がりのあるサウンド、そして駆け出していくような疾走感が爽やかである。
まとめ
今回は陰陽座の楽曲の中で、”歌謡曲”らしいものを集めてプレイリストを作ってみた。ハードな楽曲も魅力ではあるが、美しいメロディラインも陰陽座の特徴の1つである。
そして選曲してみると、定番もあればレア曲もあり、新旧満遍なく選ぶことができた。それだけ陰陽座の音楽は一貫しており、常に幅広い音楽性を追求してきたことがわかる。
もちろん今回選ばれなかった曲の中にも、歌謡曲要素の強い楽曲は多数ある。ぜひ陰陽座のアルバムを聴きながら、様々な音楽性を感じ取ってみてほしい。
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