【エレファントカシマシ】エレカシのヒット曲にはイントロがない? – ”推し曲”にイントロがない理由

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2023年にデビュー35周年を迎えたエレファントカシマシ、これまでにいくつもヒット曲を生み出してきたバンドである。

最もヒットした楽曲と言えば、1997年の「今宵の月のように」だが、この曲にはイントロがなく、いきなりサビから始まる。

よくよく考えてみると、エレカシにはイントロがない楽曲が多々あることに気付く。2023年リリースの「yes. I do」にもイントロが存在しない。

実際のところ、エレカシのヒット曲・代表曲にはイントロのない楽曲が多いのではないか、と考えて、今回の記事を書いてみることにした。

この記事ではエレファントカシマシの中でイントロのない楽曲を集め、どんな楽曲が含まれているのか分析してみることにした。

そしてイントロのない楽曲に見える共通点から、なぜ推し曲が多くなっているのかについても考察した。

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エレファントカシマシのイントロがない楽曲一覧と特徴

さっそくエレファントカシマシの楽曲の中から、イントロがなく、いきなり歌から始まる楽曲だけを集めて一覧表にした。

なお選んだ曲は、「歌と演奏がほぼ同時」あるいは「歌から始まる楽曲」である。カウントやドラムフレーズであっても、イントロがあるとして含めていない。(たとえば「花男」など)

以下に示した全49曲となった。

No.タイトル収録作品
1月と歩いた浮世の夢(1989)
2冬の夜浮世の夢(1989)
3月の夜生活(1990)
4星の降るような夜に東京の空(1994)
5OH YEAH!(ココロに花を)ココロに花を(1996)
6月夜の散歩明日に向かって走れ-月夜の歌-(1997)
7今宵の月のように明日に向かって走れ-月夜の歌-(1997)
8きみの面影だけエレカシ 自選作品集 PONY CANYON 浪漫記(2009)
9sweet memorysweet memory〜エレカシ青春セレクション〜(2000)
10生存者は今日も笑うgood morning(2000)
11孤独な太陽エレファントカシマシ SINGLES1988-2001(2002)
12部屋ライフ(2002)
13面影ライフ(2002)
14普通の日々ライフ(2002)
15マボロシライフ(2002)
16漂う人の性DEAD OR ALIVE(2002)
17オレの中の宇宙俺の道(2003)
18心の生贄俺の道(2003)
19生きている証扉(2004)
20星くずの中のジパング扉(2004)
21傷だらけの夜明け扉(2004)
22パワー・イン・ザ・ワールド扉(2004)
23友達がいるのさ風(2004)
24定め風(2004)
25風(2004)
26甘き絶望町を見下ろす丘(2006)
27リッスントゥザミュージックSTARTING OVER(2008)
28さよならパーティーSTARTING OVER(2008)
29あの風のように昇れる太陽(2009)
30ネヴァーエンディングストーリー昇れる太陽(2009)
31桜の花、舞い上がる道を昇れる太陽(2009)
32九月の雨悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜(2010)
33悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜(2010)
34いつか見た夢を悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜(2010)
35赤き空よ!悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜(2010)
36幸せよ、この指にとまれ悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜(2010)
37大地のシンフォニーMASTERPIECE(2012)
38七色の虹の橋MASTERPIECE(2012)
39ワインディングロードMASTERPIECE(2012)
40飛べない俺MASTERPIECE(2012)
41RAINBOWRAINBOW(2015)
42ズレてる方がいいRAINBOW(2015)
43TEKUMAKUMAYAKONRAINBOW(2015)
44DestinyRAINBOW(2015)
45Wake UpWake Up(2018)
46風と共にWake Up(2018)
47夢を追う旅人Wake Up(2018)
48オレを生きるWake Up(2018)
49yes. I.doyes. I.do(2023)

250曲以上あるエレカシの楽曲の中で49曲というのは多い方だろう。

非常にバラエティに富んだ楽曲が並んでいるが、1曲ずつ見ていくと、やはり結構重要な楽曲も含まれているようにも見える。もう少し掘り下げて、2つの特徴を見出した。

東芝EMI~ユニバーサル期の楽曲が多い

まず楽曲がどのレーベルの時期にリリースされたものか、と言う観点で見てみよう。以下のように並べてみると、東芝EMI~ユニバーサル期に圧倒的に多いことが分かる。

  • エピックソニー:4曲
  • ポニーキャニオン:4曲
  • 東芝EMI:18曲
  • ユニバーサルミュージック:23曲

在籍した時期の長さもあるが、それにしても東芝EMI期以降に固まっている印象である。この点については、後半で東芝EMI期の音楽性の変化に着目して考察してみようと思う。

シングル曲・定番曲が多い

当初の予想で、ヒット曲・代表曲が多いのではないか?ということを書いたが、実際のところどうなのだろうか。

一覧表の中から、シングルメイン曲だけ抜き出すと、14曲あった。これは全シングルメイン曲約55曲(51枚)のうち約4分の1を占めており、結構多いのではないか、と思う。

中でも最大のヒット曲「今宵の月のように」や、ユニバーサルにおける重要曲・ヒット曲「桜の花、舞い上がる道を」「ズレてる方がいい」「風と共に」などが目を引く。

  1. 今宵の月のように
  2. 孤独な太陽
  3. 普通の日々
  4. 友だちがいるのさ
  5. 桜の花、舞い上がる道を
  6. いつか見た夢を
  7. 幸せよ、この指にとまれ
  8. 大地のシンフォニー
  9. ワインディングロード
  10. ズレてる方がいい
  11. Destiny
  12. 夢を追う旅人
  13. 風と共に
  14. yes. I do

そしてシングルカップリング曲も、「星の降るような夜に」「sweet memory」「生きている証」「さよならパーティー」などが含まれている。

さらには「友達がいるのさ」「リッスントゥザミュージック」「RAINBOW」などライブでの重要曲・定番曲も入っていることに気付く。

2017年リリースのオールタイムベスト『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』に収録されている楽曲もいくつか含まれている。

一部には非常に渋い楽曲も含まれてはいるが、シングル曲やアルバムでのリードトラックが結構含まれているような印象がある。

この点についても、次でなぜ推し曲にイントロのない楽曲が多いのか、考察してみた。

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なぜイントロのない楽曲に”推し曲”が多いのか? – エレカシの音楽性から考える

イントロのないエレカシの楽曲について、ヒット曲・代表曲など”推し曲”と言えるような楽曲が比較的多いことが分かった。

またその時期は東芝EMI期以降、ユニバーサルミュージックの時期にもかなり多くなっていた。

こうした傾向がなぜ起きているのか、考察を試みた。

”ハードロック”から”オルタナティブ”への変化

最初にイントロのない楽曲の多い時期について触れておきたい。先ほど述べた通り、東芝EMI以降の楽曲に多く、エピックやポニーキャニオンの時期には少なかった。

これはエレカシの音楽性の変化によるものではないか、と考える。

エレカシの初期、いわゆるエピックソニー期はロックンロールハードロックがジャンルの中心になっていた。

具体的には1st『THE ELEPHANT KASHIMASHI』~3rd『浮世の夢』辺りまではロックンロール色が強く、4th『生活』以降はハードロックの要素も強まっていった。

これらのジャンルに共通するのは、印象的なリフが重要な位置を占めている、ということである。リフとはイントロなどに配置される繰り返しのギターフレーズなどのことだ。

たとえば「ファイティングマン」には、あのギターのイントロがなければ魅力は半減してしまうと言っても過言ではない。

そしてハードロック的なリフでは、「男は行く」の冒頭のヘヴィなギターこそ、ハードロックの王道とも言えるリフである。

こうした印象的なギターリフによって楽曲が始まっていく展開は、ロックの1つの様式美でもある。初期のエレカシは、こうした様式美を「かくあるべし」として取り入れていた。

それゆえエピックソニー時代には、イントロのない楽曲はほとんどなく、あったとしても宮本氏の弾き語りを主体とした楽曲が中心になっている。

その後のポニーキャニオン期も、基本的にはエピックソニー期の楽曲制作を踏襲するものであった。ただし、ヒットを狙うにあたり、違ったアプローチも見せ始めた。

悲しみの果て」は、印象的な”キメ”によるイントロが挿入されているが、いわゆるリフではない。サビのメロディを目立たせるためのリズムを刻むためのイントロである。

こうしたサビの力強さを押すようになったところが、ヒットをしっかり狙っていく路線への変化とも受け取れる。この点は次に詳しく書くことにしよう。

さて東芝EMIに移ったエレカシは、結構音楽性が変化していると筆者は思う。それは『good morning』が、オルタナティブロックの影響を強く受けた作品になったところから始まっている。

それまでロックンロールやハードロックと言った、”オールドスクール”のロックをやっていたエレカシだが、どちらかと言えばメインストリームのオルタナに移行したのだ。

特に『DEAD OR ALIVE』や『俺の道』などは、オルタナティブなギターロックという、新たなエレカシ像を作り出した2作と言って良いだろう。

オルタナティブロックにももちろんイントロのある曲は多いが、ハードロックなどのような”様式化”したジャンルとは違い、ロックの自由さをより広げたジャンルとも言える。

それゆえギターリフなどを目立たせず、イントロなしで歌から入る、という始まり方も果敢に取り入れているのではないか、と思う。

こうした音楽性の変化が東芝EMI期に、イントロがない曲が増加した一因ではないかと考える。そして東芝EMI期の音楽性を引き継いだユニバーサル期でも当然多くなっているのではなかろうか。

2023年の「yes. I.do」も、東芝EMI期のオルタナティブロックの雰囲気をまとった、やや渋い雰囲気の楽曲となっていた。

推し曲はサビの力強さを前面に押し出す

イントロがない楽曲について、単に音楽性の変化と言う理由だけではない。もう1つの理由は、ヒット曲・代表曲=”推し曲”の多さと関連しそうである。

イントロがない、ということは、いきなり歌から始まることを意味する。つまり他の印象を与えることなく、最初の歌メロをストレートに届けたい、という思いがこもっている。

そして頭に持ってくるメロディが力強いサビである、と言うのがエレカシのヒット曲の1つのセオリーになっている。

その最たる例が、「今宵の月のように」である。楽曲はAメロ・Bメロ・サビ、という歌謡曲の展開だが、まるでイントロのようにサビが頭に配置されているのが印象的だ。

また「桜の花、舞い上がる道を」も全く同様の展開であり、エレカシによるヒット曲の王道とも言える。

さらには、今回取り上げていないが、「俺たちの明日」も、ほぼイントロなしでサビのメロディがイントロ的に用いられて、ストレートに入ってくる展開になっている。

これらの楽曲は、イントロもないが、中間部などにもあまりギターのフレーズなどが出て来ない。あくまでメロディと歌を主軸に置いた楽曲であり、こうした楽曲がエレカシのヒット曲となっている。

それはエピックソニー時代、「ロックはかくあるべし」とも言える様式美の中で作られていた楽曲から、ポニーキャニオンに移って、新たな曲の作り方も学んだのだろう。

当時は佐久間正英氏や土方隆行氏などがプロデュースに入り、エレカシの新たな魅力を引き出してくれた。それが宮本氏による歌の力強さを前面に押し出す、ということだった。

エレカシは中学の同級生を中心にしたバンドであり、あまりに結束力が強すぎた部分があった。そして自分たち自身の魅力についても客観視できないところがあったのだろう。

それまで、ややマニアックとも言えるハードロック的な展開の楽曲を作っていたエレカシが、最大の魅力は宮本氏の歌であり、メロディであると、外部の人を通じて気づけたのだろう。

魅力を分かりやすく提示する1つの手法として、イントロを排する、ということもあったのだろう。それはたとえばThe Beatlesの「She Loves You」のような展開をイメージしたかもしれない。

こうしたシンプルな構成にするためには、それだけ頭に持ってくるメロディが印象的である必要がある。だからこそヒットする訳であり、イントロがなくても成立するのである。

その他にも、Aメロが頭にくるパターンの楽曲もある。「普通の日々」「友達がいるのさ」「風と共に」などがそうである。

こうした楽曲はポップなヒット曲パターンと言うよりも、先ほど書いたオルタナティブロックの流れにある楽曲であろう。

イントロがないことで、始まりも終わりもはっきりしない、という楽曲になり得る。つまりずっと続いていくような淡々とした雰囲気を作り出すのにも成功している。

「友達がいるのさ」などは、限られたコード進行を展開させながら、曲の中で盛り上がりを作っていくものであり、非常にオルタナティブロックの色合いが強い。

一般的にヒットはしなかったものの、ライブでは中核的な楽曲となっており、エレカシの魅力の別側面を作っているとも言えるだろう。

いずれにせよ、イントロがないエレカシの楽曲は、宮本氏の歌がストレートに飛び込んでくる、という特徴があり、それが成功している楽曲が多いと言えそうである。

【エレファントカシマシ】ハッと驚かされる巧みな転調・コード進行の登場する楽曲を集めてみた

まとめ

今回はエレファントカシマシのイントロがない楽曲を集めて、その楽曲の特徴について考察してみた。

エレファントカシマシとしての音楽性の変化、そしてヒット曲を世に出そう、というモードの変化などが、後にイントロのない曲を増やしたように、筆者には思えた。

そしてイントロのない楽曲は、宮本氏の歌を引き立たせる効果があり、「今宵の月のように」などヒット曲を生み出す1つの要因になっていたのではないか、と考察する。

しかし改めてイントロのない楽曲だけを集めても、実に様々なタイプの楽曲があることに驚く。多様なジャンルの音楽を、独自の解釈でエレカシの楽曲に仕立て上げている。

エレカシの楽曲の聴きどころは宮本氏の歌はもちろん、宮本氏の作り込む楽曲の展開などもあるのではないか、と筆者は思っている。

改めてエレカシの楽曲を聴き直してみると、様々な発見があるかもしれない。

イントロのない楽曲が多く収録されているエレファントカシマシのアルバム

・『扉』(2004)

・『悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜』(2010)

・『Wake Up』(2018)

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