【冠二郎】キャラクターよりも注目したい抜群の歌唱力とその魅力 – 歌唱の変遷とおすすめ曲紹介

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演歌
画像出典:Discogs

2024年1月1日に演歌歌手の冠二郎氏が79歳でこの世を去った。当ブログでも冠氏の魅力を伝えてきたので、訃報はとても残念だった。

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冠氏と言えば、ユニークなキャラクターで一時はテレビ番組に多数出演、カツラ疑惑や年齢詐称、そして年の差婚など、ワイドショーを賑わす話題の多い人物でもあった。

また世間的なイメージとしては、ユニークなキャラクターやパワフルな「炎」などの歌唱のイメージが強いかもしれない。

しかし筆者が何より注目したいのは、その圧倒的な歌唱力の高さであり、その力量については改めて再評価されてほしいところである。

今回は冠氏の追悼の意を込めて、冠二郎氏の抜群の歌唱力とその魅力について綴った。

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冠二郎の抜群の歌唱力の魅力

冠二郎氏の魅力の中で、筆者が注目したいのは、その抜群の歌唱力の高さである。論より証拠、まずは王道の演歌である「みれん酒」(1983年)が、歌唱の良さが分かりやすいだろう。

冠氏の歌唱の魅力を挙げるならば、以下の3点にまとめることができる。

  1. 抜群の安定感・ピッチの正確さ
  2. 癖のない美しい歌い方
  3. 曲のタイプに応じた歌唱の変化

1.から順にいくと、まずは何と言っても抜群の安定感とピッチの正確さである。歌の上手さの基本であろうが、基本に忠実で実直な歌唱が好印象である

とりわけ「みれん酒」のように、昭和の時代に歌われた若い頃の楽曲の正確さには舌を巻く。

関連して、2.では意外かもしれないが、癖のない美しい歌い方も魅力である。もちろん、演歌である以上、こぶしを回すなど、持ち味が発揮される部分はある。

しかし演歌歌手によくある、強すぎる個性というのは前面に出ては来ない。渋みのある歌唱でありながら、ストレートな歌い方は演歌のお手本のような歌唱であると筆者は思っている。

3.については、しっかりと楽曲に合わせて歌い方を変化させている点も魅力である。荒っぽい歌い方もあれば、切々と歌い上げるような歌唱もあり、実は歌のバリエーションもしっかりある。

筆者は冠氏から演歌の歌いまわしを学んで練習したものであるが、こぶしやビブラートなど、どれも歌の技法が丁寧で美しいのが、何と言っても魅力であろう。

※なお冠二郎氏の歴史や魅力について全般的な紹介記事はこちら

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冠二郎の歌い方の変遷

安定した歌唱の冠氏ではあるが、歌唱のスタイルには年齢とともに微妙な変化がある。全般的な特徴・魅力は先ほど述べた通りで、もう少しマニアックな視点で時期ごとの魅力を掘り下げる。

4つの時期に分け、それぞれに筆者が独自に名前をつけて解説する。

若年期(1970~80年代後半)

ビクター時代の音源は入手困難であり、コロムビアに移籍した1970年代から紅白出場の手前である80年代後半までを、若年期とした。

声自体がまだ若々しく、全体的にキーが高い。そしてまだ声の線がやや細い印象でもある。最もストレートな歌唱が魅力の時代であり、ポップス的な楽曲も歌っていた時代である。

この時期と言えば、最初のヒット曲である「旅の終りに」(1977年)がリリースされている。

再録されることはなかったこの曲は、ずっとこの若々しいボーカルでアルバムにも収録されてきた。

後の冠氏の歌唱に比べると、言葉をはっきりと歌っているようにも思われる。その分、とても聞き取りやすい歌唱になっている。

細かなニュアンスでは、後の時期の方が上手だが、メロディの正確さにおいてはこの時期が1番かもしれない

安定期(1990年代)

酒場」(1991年)で初の紅白出場を決めた時期であり、冠氏の全盛期と言っても良い時代である。

この時代の歌唱は、昭和の頃の正確さ・安定感に加えて、ドスの効いた低い声に変わりつつあり、味わいがプラスされている。

昭和の頃の線の細い声に比べ、ビシッと真ん中に筋が通ったような、気迫のある歌唱が魅力だ。

」(1992年)でアクション演歌・ロック演歌などとも言われる新機軸を見せるが、パワフルさを兼ね備えつつも、実直で丁寧な歌唱である。

この時期には、ロック演歌のような楽曲もあれば、壮大なスケールの演歌も歌いこなし、幅広い歌唱を聴くことができる。

ご本人も歌唱が絶好調であり、様々なタイプの楽曲を歌うことで、自身の実力を試したかったのではないか、と勝手に想像したりするくらいだ。

熟練期(2000~2010年代半ば)

「炎」などを作曲した和田香苗氏が亡くなり、ロック演歌路線の楽曲も少なくなったのが2000年代である。バラエティ番組などへの出演も減り、演歌歌手として実直に活動していた記事でもある。

この時期を熟練期と名付けたが、味わい深い歌唱で多彩な楽曲を歌い続けた時代である。2000年代以降は、冠氏も50代から60代へと入り、声質も”おじさん”的な要素が強まってきた。

アクション演歌などでの自由な歌い方の影響も受けつつ、90年代の完璧主義とも言える歌唱から、ムードやパッションを優先した歌唱が増えたような印象である。

ロック演歌路線ではないものの、明るく豪快な楽曲も多い時期で、”酔虎伝シリーズ”と言われる楽曲群の中で「ほろよい酔虎伝」(2005年)が代表的な楽曲だ。

90年代に比べるとラフな歌い方になっている印象だが、相変わらず正確な歌い方であることには変わりはない。

小野彩(藤あや子の作家ペンネーム)の楽曲を歌った時期もあり、「孤独の川」(2013年)などポップスも歌っており、実に味わい深い歌唱が素晴らしい。

晩年期(2010年代後半~亡くなるまで)

70代の晩年においても、冠氏は1年に1枚ほどのペースでシングルリリースを続け、歌い続けていた。

加齢とともに、若い頃のようなパワーや硬質な声は変化し、より温かみのある円やかなボーカルへと変化していった。

2016年に31歳差での結婚も話題となったが、結婚したことでますます柔らかい味わいが出るようになったのか、また今まで歌ってこなかった夫婦ものの楽曲など、新たなタイプの楽曲にも挑戦している。

過去の隠れた名曲を掘り起こすことも行われ、妻の味菜子氏とともに「あなたは男でしょう」(1982年)を2020年に歌っている。

何度見てもほっこりする映像とともに、冠氏の柔らかく温かい歌唱が胸にしみる。

最後にリリースされた「夫婦してます」(2022年)も、夫婦をテーマにした楽曲であり、老齢となった冠氏が「ありがとう」と繰り返すサビは涙を誘うものである。

しかし往年の歌唱の安定感は最後まで失われることはなかった。ここに冠氏の演歌歌手としての矜持を感じるところである。

冠二郎の歌唱力が堪能できるおすすめの5曲

最後に冠二郎氏の楽曲の中から、彼の歌唱力の高さを感じさせるおすすめの楽曲5曲を選んだ。

歌唱が難しいと思われる楽曲や、歌の表現力が素晴らしいと思われるものを中心に、新旧の楽曲を選んでいる。

度胸船

  • 作詞:三浦康照、作曲:船村徹、編曲:丸山雅仁
  • リリース年:1982年

同名の楽曲がいくつもあるが、冠二郎氏のオリジナル曲である。作曲が船村徹氏であり、いわゆる漁師ものの演歌である。

1982年と比較的古い楽曲であり、若き日の冠氏の力強い歌唱を聴くことができる。この曲のポイントは音域の幅が広く、緩急を付けながら、歌いきるのが難しい点にある。

Bメロ部分ではぐっと低いキーになり、その後で一気に高い音域まで持って行くところが聴きどころだ。冠氏は自在にその歌唱を操り、見事に歌いきっており、迫力を感じる。

のぼり竜

  • 作詞:辻本茂、作曲:和田香苗、編曲:佐伯亮
  • リリース年:1990年

後にロック演歌路線を作り上げた和田香苗氏による冠氏への作曲第1弾の楽曲である。ロック演歌ではないものの、祭囃子のような賑やかで力強い楽曲だ。

威勢の良い歌唱が聴けるこの曲だが、荒っぽく歌っているように見えて、非常にテクニカルな部分が光る歌唱である。難度の高いこぶし回しや間の取り方など、細かい工夫が散りばめられている。

こうした歌唱を難なくやってしまう冠氏の歌唱力の高さに驚くばかりである。

ムサシ

  • 作詞:三浦康照、作曲:和田香苗、編曲:前田俊明
  • リリース年:1993年

ロック演歌の3部作、「炎」「ムサシ」「バイキング」の2作目である。「炎」のインパクトに注目が集まるが、この「ムサシ」は歌唱において最も注目すべき曲であろう。

剣豪がテーマになったこの曲は、勢い一辺倒の歌唱ではなく、どこか哀愁が漂う。その要素は、いわゆるヨナ抜き音階のAメロから、サビでは西洋音階を用いているところに秘密がある。

演歌調のAメロの歌唱、サビの部分では演歌的な歌い方から、より美しい歌い方へとさりげなくシフトしている。こうした歌い方の変わり身を見ることができる、貴重な楽曲である。

天命

  • 作詞:三浦康照、作曲:山口ひろし、編曲:丸山雅仁
  • リリース年:1994年

ロック演歌路線が注目されていた時期であるが、一方で王道の演歌路線もしっかりと歌っていた時期でもあり、壮大なスケールの曲も歌っていた。

この「天命」はとりわけスケール感の大きな楽曲であり、それだけ歌が曲に負けないように気合を入れて歌わなければならない。

何と言ってもこの曲は、出だしの部分から声を張りつつ、音程を保たなければならず、非常に難度の高い楽曲である。

素人ではとても歌いこなせない曲だが、冠氏の全盛期にこの曲が歌われ、素晴らしい歌唱が音源に残されていることが嬉しい。

満天の星

  • 作詞:三浦康照、作曲:遠藤実、編曲:佐伯亮
  • リリース年:2003年

冠氏のシリーズの中に、スペクタクル演歌と言うものがある。日本国内を飛び出し、世界に広がるスケール感のテーマを歌ったものだ。

「満天の星」はモンゴルをテーマに、空に広がる星々や自然の美しさを歌ったもの。広大なスケール感を間をたっぷりと取った歌唱で表現するのだが、これがまた歌うのが難しい。

音数が多い方が歌いやすいのだが、言葉数が少ないため、伸びやかに、そしてビブラートなどの一音に込める表現力が求められる。冠氏の歌唱力・表現力が光る名歌唱・名曲である。

まとめ

今回の記事では、冠二郎の歌唱の魅力について、時代の変遷やおすすめ曲とともにまとめた。

2024年1月に亡くなった冠氏への追悼企画としての意味もあったが、改めて冠氏の歌唱力の高さを実感することとなった。

演歌のお手本のような歌唱でありながら、そこに嫌味が全くないストレートな歌唱であるところが、筆者としては魅力に感じている。

これからも歌唱のお手本として、楽曲が聴き継がれ、そして歌い継がれていくことを願うばかりである。

冠二郎のおすすめアルバム

全曲集 しぐれ坂(2021年)

80年代のレア曲を多数収録したややマニア向けの選曲のベスト盤。

ツイン・パック(2016年)

2枚組で70~80年代のレア曲から定番曲をバランスよく配置した初心者向けベスト盤。

名曲カバー傑作撰(2009年)

これまで冠氏がカバーしてきた楽曲をまとめたベスト盤。

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