新潟を拠点に活動するアイドルグループNegiccoは、7月20日で結成18年を迎えた。2003年に期間限定ユニットとして作られたが、驚くことに18年も途切れることなく活動を続けてきた。
およそ1年前に、当ブログでもNegiccoの歴史を振り返る記事を作成した。
今回は、Negiccoの18年分の成長を感じられるような記事を書いてみようと思った。
結成当時のメンバーは10代前半だったが、2021年にはメンバー全員が30代になる。歌う楽曲の内容や雰囲気は当然変化してきたと思われる。
その変化を、Negiccoの”泣ける・切ない名曲”から読み解いていきたい。それぞれの楽曲に歴史があり、泣けるポイントもさまざまにあるだろう。
記事の前半では、まずNegiccoの楽曲の特徴をまとめた。後半では筆者がNegiccoの”泣ける・切ない名曲”18曲を紹介し、楽曲の特徴や出来事なども振り返ってみたい。
Negiccoの楽曲の特徴とは?
最初にNegiccoの楽曲全般の特徴を述べておこう。
以前の記事で、Negiccoは楽曲派として知られていることを述べた。筆者もアイドルとして、というより楽曲が気に入ってNegiccoに興味を持ち始めた。
Negiccoの楽曲の多くを作っているのは、プロデューサーのconnie氏である。connie氏の作る楽曲は、普遍的なポップスであり、かえってそれがアイドルらしからぬ魅力となっていた。
そんなNegiccoには他にも多くのミュージシャンが楽曲提供を行っている。小西康陽氏、田島貴男氏、KIRINJIなど、力のあるミュージシャンによる良曲を聴くことができる。
Negiccoの楽曲の特徴は、キラキラと明るい曲調である。デビュー曲「恋するねぎっ娘」が底抜けに明るい楽曲だったことで、そのイメージが後にも続いていったように思う。
Negiccoの名前を全国区で知らしめた2013年の「アイドルばかり聴かないで」。少しコミカル、おしゃれで明るい、というNegiccoの音楽的な特徴の1つとなっている。
ライブでも定番となった2014年の「トリプル!WONDERLAND」も、アッパーで明るい曲調だ。Negiccoという名前を前面に押し出すのも、Negiccoの楽曲の特徴である。
このような可愛くて明るい曲調は、ライブでも大いに盛り上がる。デビューから2015年くらいまで多く見られていたが、近年は少なくなってきた印象だ。
Negiccoのメンバーも年齢を重ねるごとに、歌う楽曲も相応に落ち着いた曲調へと変化しているようだ。
2020年に発売された「午前0時のシンパシー」では、アイドル色は薄くなり、大人の女性としての魅力を感じさせる楽曲へと変化している。
そしてもう1つNegiccoの楽曲の特徴として、泣けるような切ない曲調も忘れてはならない。それが今回注目したい楽曲群である。
その中身は、バラードという形をとることもあれば、アップテンポで泣ける楽曲もある。”切ない”、”キュンとする”楽曲はデビュー時から一貫してNegiccoの魅力としてあり続けたように思う。
そして、年齢を重ねるごとに、そんな”切なさ”の説得力は増しているように感じた。
Negiccoの”泣ける・切ない名曲”18曲を選ぶ
それではNegiccoの”泣ける・切ない名曲”とはどんな曲だろうか?正直なところ、どんな曲にも”泣ける”要素はあるし、切なく感じるポイントは人それぞれである。
今回は筆者が好きな曲の中から、メロディや歌詞がキュンと切なくなるような楽曲をピックアップしてみた。曲数は18周年にちなんで、18曲選んでみた。
楽曲の紹介だけでなく、筆者がリアルタイムで聴いていた楽曲は、当時の雰囲気や感じたことなども書いていきたい。
Spotifyで配信されている楽曲でプレイリストを作った。「For a long time」のみ配信されていないため含まれていない。
トキメキ★マイドリーム(2004)
- 作詞・作曲:connie、編曲:鈴木ユサキ
- 収録作品:シングル『恋するねぎっ娘』(2004)、ベストアルバム『Negicco 2003〜2012 -BEST-』(2012)
まずはconnie氏が初めてNegiccoに提供した2004年の楽曲である。新潟で行われていたクラブイベント「トキメキ★ハイスクール」にNegiccoがゲスト出演した際に披露した曲とのこと。
2004年と言えば、まだアイドルも今ほど低年齢化していない時代だったように記憶している。
小学生くらいの年齢の子どもが歌うとなれば、アイドルと言うよりも、Folder(その後のFolder5)などをイメージするような時代だったように思える。
この「トキメキ★マイドリーム」も、どことなくそんな時代の雰囲気を感じさせる曲調だ。アッパーな楽曲ながら、泣ける良いメロディが印象的である。
Negiccoの楽曲の中では、最もストレートな曲の部類に入るだろう。
幼いメンバーが一生懸命歌う声が、何とも純粋で切なくなってしまう曲。まさか18年も続くとはこの時には思っても見なかったであろう。
Falling Stars(2006)
- 作詞・作曲・編曲:connie
- 収録作品:シングル『Falling Stars』(2006)、ミニアルバム『GET IT ON!』(2011)、ベストアルバム『Negicco 2003〜2012 -BEST-』(2012)
2005年の「第1回 古町音楽祭」の最優秀賞に輝いた楽曲である。
connie氏へのインタビューによれば、歌詞の内容は、「地元を離れ、夢を追うために都会に旅立った恋人への気持ちを歌ったもの」であると言う。
そして東京でのイベント出演が増えたNegiccoに、有名になってもまたこの街(古町商店街)で会いたい、というメッセージを込めたもの。だから「星のふる町」は「古町」とかけているのだ。
歌詞のテーマも切ないが、Negiccoのこれまでの歩みを思いながら聴くと感動的な楽曲だ。ライブでも大切に歌い継がれている楽曲である。
なおベストアルバム『Negicco 2003〜2012 -BEST-』に収録されているバージョンは、T-Palette Recordsに入ってから再録されたもの。
For a long time(2006)
- 作詞:Nao☆、作曲:connie
- 収録作品:シングル『僕らはともだち』(2006)、アルバム『もぎたて アイドル発見伝』(2006)
Negiccoで切ない曲、と言えば絶対にこれは外せない。シングル『僕らはともだち』のカップリング曲ながら、隠れた人気曲である。
作詞は中学時代にNao☆が担当している。淡い恋心をストレートに歌った内容は、まさに切なさ以外の何物でもない。
そしてconnie氏のメロディもとりわけ美しく響く。筆者はconnie氏の作ったメロディではこの曲が1番好きである。
近年はアコースティックでしっとりと演奏されることも多く、大人になった彼女たちが歌う「For a long time」も素晴らしい。
権利の関係上、『僕らはともだち』収録の楽曲だけ、 『Negicco 2003〜2012 -BEST-』 に入っていないのがとても残念だ。
君といる街(2007)
- 作詞・作曲・編曲:connie
- 収録作品:シングル『EARTH』(2007)、ベストアルバム『Negicco 2003〜2012 -BEST-』(2012)
2007年のシングル『EARTH』のカップリング曲で、これもまた隠れた名曲ではないかと思う。
当時のメンバーは10代後半。学生時代の淡い思い出のような1曲であり、秋から冬くらいに聴きたくなる。
「Falling Stars」同様、地元の新潟での風景を歌った楽曲である。曲調はメジャーコードを軸にした明るいサウンドながら、漂ってくる切なさが素晴らしいの一言。
Aメロの複雑なコードから、緩やかに続くBメロ、そしてストレートなサビという流れもよく練られている。
この当時は全くNegiccoについては知らなかった。ただ最初に聴いたアルバムが、この楽曲を含む『Negicco 2003〜2012 -BEST-』であったため、この時期の楽曲は思い入れが強い。
徐々に楽曲にもこだわりが見られ、”楽曲派”と言われるNegiccoの特徴が出始めている。
Summer Breeze(2008)
- 作詞・作曲:connie
- 収録作品:シングル『Summer Breeze / My Beautiful Life』(2008)、ベストアルバム『Negicco 2003〜2012 -BEST-』(2012)
2008年の両A面シングル『Summer Breeze / My Beautiful Life』収録の楽曲。
筆者は初めて『Negicco 2003〜2012 -BEST-』を聴いた時に、最初に感動したのがこの曲だった。非常に洗練されたメロディラインで、アイドルらしからぬシティポップ感に驚いた。
ビート感もある一方で、メロディはキュンと来る。T-Palette Records所属以降のNegiccoに少しずつ近づいている頃の楽曲である。
この時代の楽曲は明るさよりも、大人びた雰囲気が漂っている。デビュー時の明るいイメージに縛られず、方向性を模索していた時期でもあったのだろう。
特にこの曲は、少しクールな雰囲気で、精一杯背伸びしているようにも見える。
圧倒的なスタイル(2008)
- 作詞・作曲:connie
- 収録作品:シングル『圧倒的なスタイル / EARTH』(2008)、ミニアルバム『アノソラヘ』(2009)ベストアルバム『Negicco 2003〜2012 -BEST-』(2012)、シングル『圧倒的なスタイル-NEGiBAND ver.-』(2015)、ベストアルバム『Negicco 2011〜2017 -BEST- 2』(2017)
2008年にリリースされた、Negiccoのライブでは欠かせない楽曲である。中間部では肩を組み、ラインダンスを踊るのが恒例になっている。
2015年にバンドバージョンとして、再録されてリリースされている。
この曲は明るい曲と言えば、もちろんそうなのだ。しかし、”泣きながら笑う”ような不思議な感動に包まれる楽曲なのである。
歌詞の内容は、前向きなメッセージだが、connie氏がNegiccoに向けた手紙のようでもある。後ろ向きになりがちだったNegiccoを後押ししているかのようだ。
そんな「圧倒的なスタイル」が、Negiccoとファンがラインダンスで1つになる楽曲になったのも、必然と言えばそうかもしれない。
そして、Negiccoが活動を続ければ続けるほど、この曲の歌詞に説得力が生まれてくる。Negiccoの歴史に思いを馳せると、さらに”泣ける”楽曲になるのだ。
ぜひ歴代のライブ映像をつなぎ合わせたMVを新たに制作してほしいと思う。より泣けること必至であろう。
あなたとPop With You!(2012)
- 作詞・作曲・編曲:connie
- 収録作品:シングル『あなたとPop With You!』(2012)、アルバム『Melody Palette』(2013)、ベストアルバム『Negicco 2011〜2017 -BEST- 2』(2017)
T-Palette Recordsに所属し、徐々にNegiccoの知名度が上がってきた頃の楽曲。そしてこの曲でNegiccoを好きになった人も多いと言う、人気の楽曲である。
イントロから景色が開けていくような爽快感が夏っぽく素晴らしい。それでいて大人っぽい雰囲気もあり、サビのメロディ爽やかでいてキュンと来る。
アルバム『Melody Palette』をリアルタイムで聴いていたが、当時の感覚ではアイドルグループがここまでクオリティの高い楽曲を歌っていることに驚いた。
そしてNegiccoというグループの持っているポテンシャルの高さに感動した記憶がある。
どこか自信なさげであったNegiccoではあったが、この曲では歌に確たるものを感じる。一皮むけて、Negiccoの飛躍を感じさせる、テンションの高さも感じられる楽曲だ。
ルートセヴンの記憶(2013)
- 作詞・作曲・編曲:connie
- 収録作品:アルバム『Melody Palette』(2013)
アルバム『Melody Palette』 に収録されている、バラード的立ち位置の楽曲である。
この曲も衝撃を受けたが、シティポップ的な非常に洗練された楽曲である。そして歌詞の一節には荒井由実の「中央フリーウェイ」のオマージュが見られる。
テンション高く進んでいく『Melody Palette』であるが、この「ルートセヴンの記憶」ではスピードを落とし、爽やかな風が吹くような穏やかな時間が流れる。
たとえば「Summer Breeze」と比較して聴いてみると、一歩大人になったNegiccoを感じ取ることができる。ドライブで聴きたくなるような心地よい楽曲である。
さよならMusic(2013)
- 作詞・作曲・編曲:connie
- 収録作品:シングル『ときめきのヘッドライナー』(2013)、ベストアルバム『Negicco 2011〜2017 -BEST- 2』(2017)
シングル『ときめきのヘッドライナー』のカップリング曲。
人気は非常に高く、シングルB面曲の投票によって『Negicco 2011〜2017 -BEST- 2』に収録されることとなった。ライブでも「圧倒的なスタイル」とともに、大いに盛り上がる楽曲だ。
A面「ときめきのヘッドライナー」を作ったNONA REEVESの西寺郷太氏へのリスペクトがうかがえる。名曲「LOVE TOGETHER」へのオマージュと思われる部分もあって面白い。
ポップなディスコソングである。しかしやはり切なくキュンと来るポイントをついたメロディを乗せるのがさすがconnie氏だ。
歌詞は言葉遊びもあって、英語に聞こえてしまう日本語が使われている。それでいて、アイドルとファンが出会う”現場”を歌った内容は、グッと来てしまう。
connie氏はファン目線で泣ける楽曲を作るのがうまいな、とつくづく思う。
サンシャイン日本海(2014)
- 作詞・作曲・編曲:田島貴男
- 収録作品:シングル『サンシャイン日本海』(2014)、アルバム『Rice&Snow』(2015)、ベストアルバム『Negicco 2011〜2017 -BEST- 2』(2017)
Original Loveの田島貴男氏が楽曲制作・プロデュースを行った勝負作である。Negiccoとしての知名度も上がりつつ、オリコンチャートトップ10入りを目指してリリースされた。
田島貴男氏が作るとなれば、いったいどんなおしゃれな曲ができるのだろうと思っていた。そして曲を聴いた瞬間、良い意味で裏切られた。
まさかのド直球の歌謡曲である。しかしこれがとんでもなく良いメロディで、なんと良い曲を提供してくださったのだろうと思った。
アナログな映像のMVとも相まって、ノスタルジックで切ない楽曲となった。アイドルが良質なポップスを歌う、という昭和の良き側面を継承する作品となっているのではないだろうか。
ちなみに残念ながら惜しくもトップ10には入れず、11位。
しかしその当時のリリイベのアツかった(夏で本当に暑かった)こと、トップ10は達成できなかったがファンの結束が固まったことなど、筆者としても一番思い出深い時期だ。
なおOriginal Loveの2015年のアルバム『ラヴァーマン』には、田島氏による「サンシャイン日本海」のセルフカバーが収録されている。
光のシュプール(2014)
- 作詞・作曲・編曲:田島貴男
- 収録作品:シングル『光のシュプール』(2014)、アルバム『Rice&Snow』(2015)、ベストアルバム『Negicco 2011〜2017 -BEST- 2』(2017)
「サンシャイン日本海」で11位まで来ることができた。今度こそトップ10入りを目指し、長年のパートナーであるconnie氏による楽曲で勝負に出た。
編曲は前作に続き、田島氏が担当している。今回は田島氏らしいサウンドで、キラキラとした冬の光景が浮かぶようなアレンジとなっている。
そしてこの曲は、制作陣がNegiccoを大人に近づけようとしているように思えた。その一方でNegiccoはまだまだ元気いっぱい、と言う印象。
Negiccoがこの曲のイメージに近づいてくるのは、もう少し後になってからかもしれない。
この時期はとにかく怒涛のリリース・ライブ活動が行われており、なんと前作から5か月足らずでのリリース。そしていつの間に、と思ったフィンランドでのMV撮影が行われている。
筆者としても、最もNegiccoと関わった時期であり、リリイベにも足しげく通った。Negiccoがステージを駆け上がっていく様子が眩しかった。
そんなキラキラした思い出がたくさん浮かんでくる懐かしい1曲である。
クリームソーダLove(2015)
- 作詞:Nao☆、作曲:connie、編曲:北川勝利
- 収録作品:アルバム『Rice&Snow』(2015)
Nao☆による作詞の可愛らしいポップス。この曲も決して泣かせるタイプの曲調ではないのに、なぜか切なくなってしまう楽曲である。
「光のシュプール」が2014年の12月リリース、そしてアルバム『Rice&Snow』は翌2015年1月とかなりのハイペースだった。
目まぐるしく新しい曲が発表されていく中、この「クリームソーダLove」は、変わらないNegiccoを感じさせてくれる、ホッとするような曲だった。
新しいステージに進んでいくNegicco、これまでのNegiccoの間で揺れるような時期だったようにファンからは見えた。どんどん新しいファンも増えていった時期であったと思う。
ファンとの距離感がとても近かったNegiccoだったが、人気が出ればどうしても少しずつ離れていくことは仕方ない。そんな複雑な気持ちもちょっと思い出してしまう1曲である。
矛盾、はじめました。(2016)
- 作詞:土岐麻子、作曲:さかいゆう、編曲:connie, NEGiBAND
- 収録作品:シングル『矛盾、はじめました。』(2016)、アルバム『ティー・フォー・スリー』(2016)、ベストアルバム『Negicco 2011〜2017 -BEST- 2』(2017)
ずっとアッパーなシングル曲が続いた中で、しっとりとしたナンバーに驚いた記憶がある。ラテン風のリズムに、大人の女性を思わせる歌詞がとても新鮮だった。
そしてメンバーは20代後半に突入し、活動や楽曲にも変化が見られた時期である。
日本武道館での公演を目指し、がむしゃらに頑張ってきたNegiccoだったが、新潟と東京を行き交いながらハイペースな活動には限界が近づいていた。
当時のリリイベでは、メンバーが相次いで体調不良となり、Meguのみでイベントをやった時(オリナス錦糸町にて)もあった。
Negiccoの活動をどのように続けていくのか、チーム内でも色々と話し合われた時期だろうと思う。そんなムードを先読みしたかのように、楽曲もしっとりしたものに変化していった。
ハイテンションな時代が終わっていく、そんな切なさも思い出されるのが、筆者にとっては「矛盾、はじめました。」なのである。
1つだけ脱線すると、アイドルのリリイベでは聖地のようだった「サンストリート亀戸」が閉店前に、この「矛盾、はじめました。」のリリイベが行われた。
筆者も参加したが、昔の曲「完全攻略」や「トキメキ★マイドリーム」なども多数披露され、リリイベとは思えない充実したライブだった。
土曜の夜は(2016)
- 作詞:connie、作曲・編曲:角谷博栄(ウワノソラ)
- 収録作品:シングル『土曜の夜は』(2016)、アルバム『ティー・フォー・スリー』(2016)
Negiccoの心境地を感じさせる楽曲である。connie氏が楽曲提供を依頼する際に、シュガーベイブの雰囲気も良いな、といったことに納得できる楽曲だ。
打ち込みサウンドの多かったNegiccoだったが、この曲辺りからアコースティックなイメージが強まっていく。Negiccoの3人のナチュラルなボーカルとの相性も良いことが確認されたように思う。
2番が終わった後の、間奏はいつも鳥肌が立つ。イントロのピアノに戻り、3人のコーラスも素晴らしい。
ここまで表現の幅が広がったことに、Negiccoの目覚ましい成長を感じた。もうすっかり大人の女性になったNegiccoの歌を聴くことができる。
そして徐々にNegiccoはアイドルと言うより、シンガー的な色が強まってきたように感じた。それとともに、ライブの雰囲気も変わってきたように記憶している。
Negiccoの現場は荒れることはないが、ワイワイ楽しむ、という印象だった。それがしっとり聞かせる楽曲が増えてきたことで、ネギライトを持って振るような曲は減ってきた。
「矛盾、はじめました。」や「土曜の夜は」を聴くと、その頃の過渡期のライブを思い出す。楽曲としては、この時期は本当にハイクオリティでとても良い曲で気に入っている。
愛は光(2017)
- 作詞・作曲:堀込高樹、編曲:KIRINJI
- 収録作品:ベストアルバム『Negicco 2011〜2017 -BEST- 2』(2017)
2枚目のベストアルバムの制作に際し、書き下ろされた楽曲である。
T-Palette Recordsに参加してからの歴代シングルA面曲が時系列に並ぶベストである。その中での新曲とは、まさに今この瞬間のNegiccoを表す楽曲になるということだ。
曲調はゆったりとしたバラードである。そして歌詞は、アイドルとファンとの”照らし合う”関係を歌ったものであり、自分たちの活動を振り返っているようにも聞こえてくる。
激動の活動をくぐり抜けた先にあったのは、思いのほか静かな地平だった、というような印象だ。そこには私たちと、ファンのみんなだけがいる世界が存在するかのようである。
アイドルの世界では、ファンはアイドルの目の前にいるようでいて、その間には様々な”大人の事情”が介在している。そんな裏側が見えてしまうと、どこか寒々しさを覚えてしまう。
Negiccoとファンとの間には、限りなくその”間にあるもの”が小さくあったように思う。だからこその信頼関係があり、Negiccoが愛される所以であるように思う。
そんなNegiccoとファンの関係を見事に描き切った名曲であると思っている。
カリプソ娘に花束を(2018)
- 作詞・作曲:connie、編曲:サイトウ “JxJx” ジュン・YOUR SONG IS GOOD
- 収録作品:シングル『カリプソ娘に花束を』(2018)、アルバム『MY COLOR』(2018)
アルバム『ティー・フォー・スリー』辺りから、打ち込み中心のサウンドから、より生音のアコースティックな響きを重視し始めたNegicco。本作もアレンジ的にはその流れを汲んでいる。
曲調としては、ラテンミュージックを土台にしたもので、陽気なサウンドになっている。カリプソとは、カリブ海の音楽のスタイルであり、陽気なリズムが特徴である。
しかし明るさだけで押していかないのが、この頃のNegiccoである。歌詞の内容は、結婚する娘から父にあてたものであろう。
そしてNegiccoにとっての父とは、マネージャーでありEHクリエイターズ会長の熊倉維仁氏である。ここにも実はNegiccoと長年支えてきたマネージャーとの物語が隠された楽曲となっている。
それだけでも泣けてしまう楽曲だが、印象的だったのはタワーレコード錦糸町店が閉店する際に、この「カリプソ娘に花束を」のリリースイベントが行われた。
Nao☆が大サビ前のブレイクで「錦糸町店さん、今までありがとうございました!」と述べた後に、スーツを着た熊倉氏が壇上に上がり、Nao☆に花束を渡す場面があった。
床が抜けると禁じられていた「圧倒的なスタイル」のラインダンスも最後には解禁され、歴史に残るリリイベとなった。
She’s Gone(2018)
- 作詞・作曲:夏目知幸、編曲:シャムキャッツ
- 収録作品:アルバム『MY COLOR』(2018)
前作『ティー・フォー・スリー』以上にバンド編成の生音アレンジが増えたアルバム『MY COLOR』。ポップスだけでなく、ロック色の強めの楽曲も増え、音楽性に変化も見られている。
中でも極めて異色の楽曲がこの「She’s Gone」である。解散してしまったシャムキャッツによる楽曲であり、インディーポップ色の強いサウンドはNegiccoにとってはかなり新鮮だった。
タイトで溌剌とした楽曲が多かったNegiccoが、こんなルーズなタイプの楽曲を歌うのが面白かった。そして思いのほか、似合っていたことにも驚きであった。
さらには歌詞の内容が、アイドルを辞めたかつての仲間にメールすると言うもの。生々しさを感じつつ、15年以上アイドルを続けてきたNegiccoが歌うからこその説得力もある。
暮らす世界の変わってしまった二人の、どことなくトゲのあるやり取りが切ない。こんな大人の苦い心情も歌うようになったNegiccoの成長を感じる楽曲でもある。
おそらく様々なアイドル界の闇も見てきたことだろう。Negiccoがここまで活動を続けてきたことが、改めて凄いことだと感じた。
なおシャムキャッツの2018年のアルバム『Virgin Graffiti』には「She’s Gone」のセルフカバーが収録されている。
硝子色の夏(2018)
- 作詞:中島愛、作曲・編曲:ミト(クラムボン)
- 収録作品:アルバム『MY COLOR』(2018)
アルバム『MY COLOR』は表現の幅が広がって、音楽的に豊かになったアルバムだと感じる。後半は心地よいポップスが続くが、この曲からラストに向かってじっくりと聴かせてくれる。
イントロからして、言いようのない切なさである。作曲・編曲はクラムボンのミト氏であり、アレンジに関してはもう完璧である。
Negiccoの純粋な部分を、さらに大事に大事に包みこんで1曲にまとめたような楽曲だと思う。そして、この曲を聴いた時、Negiccoはアイドルという時代を終えようとしているように感じた。
Negiccoはこの先も続いて欲しいし、アイドルとしての佇まいも変わらないのだろうと思う。しかし、もう少し狭義の、若さゆえにがむしゃらな”アイドル”が終わろうとしているのを感じたのだった。
この楽曲には、自然体のNegiccoがただ存在するように思える。
Negiccoがアイドルから次のステージへ、何か美しい脱皮の瞬間を見たかのような、そんな楽曲なのである。
まとめ
今回はNegiccoの18年間の歴史を、”泣ける・切ない名曲”を選び、振り返ってみた。
Negiccoが新潟でアイドルとして活動を始め、自らのスタイルを模索し、その結果、飾らず自分らしくあることでNegiccoというスタイルが確立されて来たのではないかと思う。
筆者はT-Palette Recordsに所属し、2015年頃までのどんどん活動を増やしていく時期を主に見てきた。一般的に、アイドルとは成長の物語であり、上に上に向かっていくことにファンがついてくる。
しかし多くのアイドルが上に向かうことに限界を迎えて、活動を終えてしまう。あるいはメンバーを入れ替えることで、活動を繋いでいくのである。
Negiccoはメンバーチェンジがなく活動を続けられたのは、あるタイミングで”持続可能な”活動に切り替えたからだろうと思う。
そんなNegiccoの1つの区切りを感じさせるのが、アルバム『MY COLOR』辺りである。実際のところ2018年をもって、これまでのハードな活動には区切りをつけている。
2019年はソロ活動が増え、2021年までにメンバー全員が結婚している。明らかにNegiccoというグループの在りようは変化した。
今のNegiccoという物語の進みは、かなりゆっくりだ。しかし、上に向かうだけではないアイドル活動が、どうなっていくのか前人未到の道は続いていくのだと思う。
今後はどんなNegiccoが見られるのか、楽しみにしたい。
※今回紹介した楽曲のプレイリスト
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