6th『踊る一寸法師』
インディーズで発表された作品であり、近年入手困難であったが再発されて現在は入手可能なアルバム。ドラマーの交代や環境の変化ということにもよるのか、新たな一面を見ることができる作品になっている。これまでの作品では描かれる世界観の多くは小説や怪談などの空想上の世界が多かったが、パチンコの歌である「羽根物人生」「ダイナマイト」やコミカルな「三十歳」など世俗的なものを題材にした曲や音楽的に実験的な曲も含まれている。ただ人間椅子は初期においても、日本的な世界観だけに留まっていなかったことだけは改めて述べておきたい。もともと幅広かった作品に、さらに広い世界が見えた作品と言った方が良いかもしれない。和嶋・鈴木氏の出身地である青森を題材にした曲はこれまでもあったものの「どだればち」では全詞が津軽弁で書かれており、多くの人にとっては後のベスト盤を見るまで歌詞の意味が分からなかったのではないだろうか。
7th『無限の住人』
今作ではポニーキャニオンに移り、漫画「無限の住人」のイメージアルバムとして制作された。とは言え、曲のテーマとなっているものは漫画だけに縛られることなく人間椅子のフルアルバムとして楽しめる。コンセプトアルバムとして制作されている以上、核となっている曲は日本的な世界観が展開されている。特に「晒し首」「無限の住人」「蛮カラ一代記」「辻斬り小唄無宿編」などは、江戸時代の日本を思い起こさせる。しかし楽曲という観点から見れば、多様な音楽性が盛り込まれており、コンセプトがあるということは、むしろ作品にまとまりを持たせておりプラスにはたらいていると言えよう。印象的な曲はラストの「黒猫」だ。非常に展開も多くいかにも人間椅子らしい曲で、ラストのソロはブラックサバスを思わせる。
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