【人間椅子】ギター和嶋慎治の歌詞の変化を6つのキーワードから紐解く – 歌詞の変化がもたらした再ブレイクの要因とは?

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人間椅子再ブレイクと和嶋氏の歌詞の変化

ここまで6つのキーワードに沿って、楽曲を紹介しながら和嶋氏の歌詞の変遷をたどってきた。ある程度、時期で歌詞の特徴を分けることができ、大きく変化しているポイントもあった。

さて、冒頭にも述べた通り、和嶋氏の歌詞の変化と人間椅子の活動の波には、いくらか関連があるように思われる。特に近年のブレイクを考える上で、和嶋氏の歌詞の変化は大きな意味を持つ

そこでこれまで見てきた歌詞の変化と、人間椅子の低迷・ブレイクを結びつけて考察を加えてみたい。

高い芸術性を誇りながらも不遇時代が続いた理由

人間椅子の初期~中期を、和嶋氏の歌詞のキーワードを用いると、以下のようになるのではないかと思う。

  1. 文学性」+「猟奇・不可解な世界観」→高い芸術性を持つオタクな世界観、フィクションの世界(現在まで文学的表現は続く)
  2. 心の闇」→現実と向きった結果、闇が前面に出る

以上の流れについて、詳しく解説していこう。

”イカ天”でデビューした人間椅子は、明らかにイロモノバンドとしての扱いを受けており、その怪奇でおどろおどろしい世界観に注目が集まっていた。

キーワードの「猟奇・不可解な世界観」が目立っていたが、単に気持ち悪い歌詞であったわけではない。常に「文学性」がセットになっており、芸術性の高さも評価されていたのだろう。

こうした歌詞は、いわゆる”オタク”の層に支持されたと思われるが、やはり一部のコアなファンの音楽ではあった。デビュー時こそ売れたものの、徐々に売り上げが落ちていくことになる。

初期4作ほどの和嶋氏の歌詞は、まだ文学青年の延長のようで、フィクションの世界に生きているような印象である。しかしメジャーでの契約が切れた後は、少しずつ変化が見られた。

それは3つ目のキーワードに挙げた「心の闇」である。生活苦や売れない状況もあって、文学青年のような歌詞の世界観だけではリアリティがなくなってきた。

自身の気持ちに素直に作詞した結果、怨念がこもったような歌詞も登場するようになった。この当時は、バンド全体もどんよりしたムードもあり、ファンもどこか鬱屈したものがあったように思う。

筆者自身は2000年頃にファンになったが、「どうしてこんなに評価されないのか」と周りを呪うような気持ちになったことが何度もある。

そんな怨念を感じる瞬間に、人間椅子の音楽を聴くと、それと同調して得も言われぬ快感があった。当時の人間椅子は、負の感情が原動力だったと言って良いのかもしれない。

しかし負のオーラに包まれていては、支持を広げることは難しかったのだろう。やはり物事を良い方向に進めるためには、ポジティブなマインドが必要なのだ。

それでもメンバーがバンドを続けることに対しては純粋な思いであったがために、解散することなく続いたことが幸いだった。

近年の再ブレイクのカギは”救い”?

中期~現在に至るまでには、以下のような流れが考えられる。

  1. メッセージ性の強まりと混沌」→和嶋氏の思いを歌詞に乗せるが、賛否両論が起こり、混迷へ
  2. 表現の軸の獲得」→歌詞のメッセージに一貫性が生まれる、人間椅子の歴史への注目
  3. 救いの言葉」→人間の存在についての歌詞、報われてこなかった人への鎮魂歌

そんな状況に1つの変化があった。2001年の10th『見知らぬ世界』で、和嶋氏はこれまでの表現方法を大きく変えて、明るい曲調とストレートな歌詞の楽曲が増えた。

今振り返れば、和嶋氏が自身の思いを乗せると言う大きな変化だったが、あまりに急激な変化であったために賛否両論が巻き起こる。

和嶋氏自身もそれを感じ取り、その路線をそのまま継続することはしなかった。

結果的に和嶋氏の歌詞は、迷走することになる。さらに40歳を迎えて、人生についても迷うことが増えて、人間椅子もさらに厳しい低迷期を迎えることとなってしまった。

この一連の流れを「メッセージ性の強まりと混沌」としてまとめた。

同じ時期にドラマーがナカジマノブ氏に交代している。人間椅子、そして和嶋氏にとって最も厳しい時期だったが、そんな時代をナカジマ氏の明るさが支えてくれたことは本当に大きな意味があった。

ダークなサウンドとともに、ダークなオーラをまとっていた人間椅子とそのファンにとっては、ナカジマ氏は最初はあまりに異分子と言う印象だった。

しかしナカジマ氏は自身の基本スタンスは変えず、和嶋・鈴木両氏を尊敬し、必死についていこうとした。そんな姿勢はバンド、そして和嶋氏の心境にも変化をもたらしたのではないか。

和嶋氏の混迷の出口が見え始めたのは、2009年の15th『未来浪漫派』頃であった。「表現の軸の獲得」というキーワードを出したが、歌詞に一貫したメッセージが見られるようになった。

同じ頃に20周年のベスト盤がリリースされたことも重なって、にわかに人間椅子は盛り上がりを見せ、徐々にではあるがライブの動員も増えていった

そして和嶋氏も自身の表現の軸の獲得や、苦労の経験を積極的にインタビューで語るようになった。こうした人間椅子の歴史への注目も、ファンの拡大に一役買っていた。

”美しく生きる”と述べていた和嶋氏、この頃から顔つきが精悍になり、目に輝きが出てきたように思う。

当時の筆者は、和嶋氏の変化に対して、どうしても負の感情を原動力とする人間椅子を失った”喪失”を経験していた。それは受け入れるしかないもので、時間がかかった。

しかし筆者も人生で様々な経験をし、和嶋氏の伝えようとすることに共感を持てるようになり、和嶋氏の歌詞に救われるようになった。そんな頃には、人間椅子は大きくブレイクをし始めていた。

2013年にはOZZ FEST JAPAN 2013への出演をきっかけに、さらにファンが拡大する。この時期は、活動を広げながら、和嶋氏の歌詞もより深みを増していった。

そして人間という存在を正面から描く楽曲が登場し始める。2014年の18th『無頼豊饒』の「隷従の叫び」から、毎回ラストに配置される楽曲は、和嶋氏のメッセージ色が濃い。

ここでのキーワードは「救いの言葉」とした。苦しみがあるから楽がある、と和嶋氏が述べている通り、苦しみをくぐり抜けてきたからこそ、見えた地平があるのだろう。

そんな和嶋氏の歌詞は、苦しんできた自身への鎮魂歌のようであり、同じく苦しんできた人への鎮魂歌となったのではないかと思う。

つまり負の感情が原動力だった人間椅子を救い、そんな人間椅子が好きだった私のようなファンも救ったのだった。

救いの言葉」を込めるようになったことで、さらに人間椅子に注目する人が増えた。仏教の悟りが薫る、とでもいうべき、清らかなパワーに満ちているのが今の人間椅子だ。

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まとめ

今回の記事では、和嶋慎治の歌詞の変化を追いかけ、さらに人間椅子の浮き沈みと関連させながら考察を試みた。

現在の人間椅子は、ダークで恐ろしい音楽をやっているのに、清らかであることが非常に面白い。しかし光と闇が表裏一体であるように、闇を描くからこそ光が見えてくる

こうして捉えると、和嶋氏の歌詞が変化してきたことにも納得できるし、やはりポジティブな力が人々を惹きつけることも感じさせてくれる。

もちろん人間椅子がブレイクした要因は他にも多数あるだろう。ここでは和嶋氏の歌詞に絞って考察してみたが、言葉の持つパワーによってここまでバンドの浮き沈みに影響するのだと驚いた。

”言霊”と言ったりするが、言葉には不思議な力があり、その言葉が発するものと似た人を引き付けるのかもしれない。

今の人間椅子はダークな音楽を演奏する、物凄くピュアで清らかな心のバンドである。だからこそ、サウンドが変わらずとも、ブレイクに至ったのではないか、と思う。

和嶋氏の歌詞に着目して、今後の人間椅子の楽曲も楽しんでいきたい。

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